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社会・全般
2011年4月11日(月)23:30

生命倫理(行雲流水)

 その昔、雄鶏は「コケコッコー(朝ですよー)と鳴いた。雌鶏は卵を産み、温めてひなを孵した。ひなは母鶏の後について餌のとり方を学んだ。今日では、雄鶏のおたけびは聞こえなくなり、雌鶏は無精卵を量産する「機械」と化し、並んでヨチヨチ歩くかわいらしいひなの姿も見えなくなった


▼一般の大型養鶏場では鶏を密飼にし、餌やりや採卵などがオートメーション化されている。また、人工的な照明の調整で多産を促している。冬でも、卵をよく産む明るい時間の長い春先の状態にして、産卵をできるだけ休ませないようにしている

▼NHKの番組「いのちドラマチック」によると品種改良も繰り返されて、年間300個も産卵する白色レグホンは、卵を温めてヒナにかえす「就巣性」を失ってしまっている

▼その結果、生産コストは安く抑えられて、鶏卵は「物価の優等生」と言われて、ヒトに恩恵をもたらしている。しかし、種(しゅ)としての鶏の思いは別である

▼ブルドッグの場合、闘う犬から愛玩用に改良されたが、胎児の頭部や肩幅は大きく、自然分娩はできず、人の手による帝王切開で出産している。金魚の原種はフナであるが、人の好みで品種改良された金魚の王様と言われる「らんちゅう」は、泳ぎが下手で、自然の中で生きていくことができない体になっている

▼生命科学の技術の応用が進んでいる。例えば、種牛と同じように、ノーベル賞級の人の精子バンクがすでに存在する。生命倫理は人間の尊厳を守り通せるのだろうか。


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