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視点・焦点
2018年5月19日(土)8:53

【視点・焦点】知事退院会見後の行方/竹中 明洋 

 少し驚いた。膵臓(すいぞう)癌の手術のため入院していた翁長雄志知事が15日に退院し、県庁で開いた記者会見のことだ。1期目の任期を全うするのか、そして今年11月の県知事選に出馬する意思があるのか。記者からそう質問が出ると、知事はこう答えている。


 「出馬というよりも、一日一日の公務についてやっていきたいと思っています」。以前と変わらない発言とはいえ、このタイミングで出馬はおろか任期を全うするとも明言しなかったのだ。

 知事周辺は盛んに回復ぶりを強調し、退院も予定より早まったとしている。だが、早期の公務復帰へ意欲を見せたとはいえ、知事が痩けた頬で会見に現れ、わずか10分で切り上げたことと、任期を全うするとさえ明言しなかったことで、順調な回復とは映らなかった。

 癌がステージ2であることを明らかにしたのも、病状を丁寧に説明したとはいえ、かえって2期目が務まるのかと不安を高めることにつながった。

 この記者会見のねらいに、突然の入院で綻びが出始めた知事の求心力を盛り返そうとの思いがあったとすると、効果は出なかったように思う。早くも翌日には、県庁発で知事退任はそう遠くないとの噂が飛び交った。

 県政与党の革新各党は、知事選であくまでも翁長知事を支えるとの立場だが、本人が立候補しない場合はどうするのか。

 「イデオロギー色が強まった」としてオール沖縄会議から離脱したはずの金秀とかりゆしの両グループは、27日に一部の県政与党会派とともに新たな団体を立ち上げて翁長支持体制の再構築を図るようだが、これも翁長知事が再出馬することが前提だ。本人の体調次第では、枠組みもどうなるか分からない。県政与党は、難しい対応を迫られそうだ。

 そうしたなか、辺野古移設の是非を問う県民投票実施を求める署名集めが始まった。署名が法定数に達すれば、6月県議会で県民投票条例案が提出されるだろう。知事選も視野に、どのタイミングで投票を行うのか。

 知事の残るカードである埋立承認の撤回に踏み切るかどうかも含めて、自民党本部は沖縄の一挙手一投足をウォッチする一方、総務省にも問い合わせて綿密なシミュレーションを練っている。知事選に向けた前哨戦は既に始まっている。

 その自民党や経済界などによる候補者選考の動きも進んでいる。十数人に上った名前も半分以下に絞り込まれてきたようだ。だが、これからが大変。当初は今月末までに選考を終えたいとしていたが、県連会長のトラブルの影響もあり、ずれ込みそうだ。

 16日には、那覇市内で若手経済人を知事候補に推すグループによる集会が開かれた。かねてから活発な動きを見せていたこの経済人は、自民党などによる候補者選考にエントリーする一方で、周辺からは選考の過程が不透明なら独自に立候補することも検討しているとの声が聞こえてくる。

 これには、保守分裂の激しい争いとなった今年3月の石垣市長選の二の舞にならないかと懸念する声も出ている。

 菅義偉官房長官が今日と明日、来沖する。翁長知事が体調不安を抱えるのをよそに精力的に県内各地を回るようで、名護市の渡具知武豊市長との面談や経済界との夕食会、さらには国道58号線の拡幅にともなうキャンプ・キンザーの一部用地の返還式典への出席などもセットされている。

 この機会に知事選の候補者選考についてもやりとりがあるのだろう。次回この記事を書く頃には、知事選の構図もはっきりしてくるのではないか。

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