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人生雑感
2015年10月31日(土)9:01

【人生雑感】親の児童虐待の増加と社会的損失の増大

沖縄国際大学名誉教授 福里盛雄

1 人の子は、他の哺乳類動物の子より一年早産であると言われています。

 なぜならば、人間以外の哺乳類動物の子は、生まれてしばらくすれば、自分の力で立ち歩き、自分で母親の乳房を探しお乳を飲みます。人間の子が、これだけのことを自分でするには、一年は必要です。そういう意味で人の子は、他の哺乳類の動物の子と比較して一年早く生まれてきたと言われているのです。

 人間は、一人前の人間として生活していくためには、他の哺乳類動物と比較して、複雑な能の働きが不可欠です。人の子は、生まれて一年の間に、人としての生活能力の土台を修得する、と専門家は指摘しています。
 この期間は、人の子はすべてを他人に依存して成長していきます。子にとってその期間は、受け身の立場に立ちます。その期間に親の愛情を十分に受けることによって、自分の人間としての価値観を芽生えさせます。自分が生まれてきたことが周囲からも喜ばれているのだと確信し、どんな困難も乗り越えて、自分の望みを達成しようという意欲を抱く人格の土台が形成されます。このように、人の子にとっては、この一年という期間は、その子が成長して、社会生活をしていく精神的土台を築く大切な期間といえます。子に対する虐待行為は、無限の可能性のある人材を失うこととなり被虐待者である本人にとっても不幸であり、社会にとっても大事な宝を失うことになり、社会発展のために大きなマイナスとなります。
 

2 子の虐待は、しつけに対する認識不足に起因している場合が多い。

 確かに親は子を監護教育するべき責任を有する者であり、子の教育のために、子をしつけなければなりません。そのためには、必要なら愛のむちを与えなければなりません。その点について、聖書は「むちを控える者はその子を憎む者である。子を愛する者はつとめてこれを懲らしめる」と教えています。この聖書の教えに従って、子を教えるためには、愛のむちを与え、懲らしめることも必要でしょう。しかし、ここでいう愛のむちを与え懲らしめるとは、子を教育し教えることであります。親の感情にもとづく単なる暴力、暴言、養育放棄等をしてはなりません。
 子に対する虐待行為は、年々増加し、その方法も巧妙化しています。子に対する虐待は、14年度は、児童虐待最多8万9000件で、沖縄では478件発生したと全国児童相談所は報じています。実際は、もっと多いのではないでしょうか。
 子が虐待されている場合、その子を救い出すためには多くの保護機関があります。ところが、その機関が十分に機能していない感が致します。また、他の関係機関との連携も不十分だと考えます。虐待を受けている子は、自分で保護機関に保護を申し出ることには困難を伴います。自分で保護機関に申し出ることによって、子はさまざまな不利益を親から受ける可能性があるからです。
 ですから、関係機関にもっと強い権限を与えることが必要かと思います。虐待行為をするのは、親をはじめ身内の者です。特に結婚の破綻によって、家庭生活が乱れてくると、家庭から離れては生活していくことのできない幼児がその不利益を被ることは、必然的です。
 幼児が、健全な監護教育を受け、健全に成長していくためには、まず幸せで健全な家庭をつくらなければなりません。健全な家庭とは、愛に満ちあふれ、各人が個性豊かに生かされている家庭です。私たち親は、子供から信頼され、自分を親に委ねていることを、誇りに思い、喜びを持って子供を育てたいものです。そうすれば、子の虐待は減少します。

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