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行雲流水
2016年3月5日(土)9:01

【行雲】(卒業)

 春。この季節になると毎年思い起こされる二つのことがある。いずれもかなり古いものであるが脳裡から離れることがない。何らかの事件にかかわることならそれなりに記憶される意味合いもあろうかと思うが、そのようなことではなく単に懐かしさとほろ苦さを繰り返して思い起こすだけである

▼一つは、小学校の卒業式で歌った「仰げば尊し」の歌曲である。いまではほとんど歌われなくなってしまった卒業式の歌だがそれも無理からぬことだろう。なにしろ明治17(1884)年に小学唱歌として広められた唱歌で、それも原曲はアメリカの歌曲であることが2011年に一橋大學の桜井雅人名誉教授によって明らかにされたといわれる

▼桜井先生の発見した「Song fortheCloseofSchool」と「仰げば尊し」の歌詞は学び舎を去る若者たちの心の揺れが共感される古典的ともいえる抒情歌だ

▼後の一つは「4月は最も残酷な月だ」のフレーズだが、これには忸怩(じくじ)たる思いがある。T・S エリオットの「荒地」の冒頭のフレーズだが、頭に残ったのはこれだけであとは何もない

▼二十歳のころ読めると思ったが入り口で退散した苦い思いを残した詩だ。聖書、神曲、アーサー王物語などヨーロッパの古典ひいては東欧の風土や文化についての知識がなくては理解できない。一見易しそうな表現だがとても歯が立つ代物ではないことが分かった。あれから何十年にもなって手を付けるわけでもないのに未だにこだわっている

▼3月1日、県立高校の卒業式ではどのような歌が卒業ソングとして歌われたのだろうか。忘れられていないだろうか。これまで過ごしてきた日常が大きく変わりゆく境目だ。青春の頃に心に刻まれたものはいつまでも記憶に残るものだということを忘れないでほしい。

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