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【特集】2022年新年号【特集】新年号
2022年1月1日(土)8:57

農家や漁業者の加工、流通を支援

地元産の野菜が即売されているあたらす市場

地元産の野菜が即売されているあたらす市場

6次産業化は、農業や漁業者が生産から加工、流通まで手掛ければ付加価値が高まるとする経済概念。1次(生産)×2次(加工)×3次(流通)=6次の造語という。市産業振興局は「6次化」は「地産地消」を底上げする一つの手段と施策の方針を示した。ファーマーズマーケット「あたらす市場」は、地産地消の拠点として定着。農水産物の加工土産品も多く扱い「6次化」を後押ししている。宮古では観光農園「ユートピアファーム宮古島」(上地登代表)や島の多様な物産を扱う「島の駅みやこ」(西里長治代表)などが「6次化法人」の先進事例。伊良部の「奥原鰹節工場」(奥原栄一代表)や下地の「まいぱり宮古島熱帯果樹園」「ワイドー市場」なども広く知られる。観光を産業の柱とする宮古ではコロナ禍(2019年暮れから21年10月)が影響し観光客が激減。観光と関連するホテルや飲食店、土産品を扱う店舗など広い分野に激震が走り、農・漁業にも響いた。今回の禍を経験に今後の「地消(販売)」は地域の枠を超えて「ネット発信」にも目を向ける時期に来たのかもしれない。「産地直送」が人気のネット販売では多くのマンゴー農家が成功している。

6次産業化を推進/市産業振興局
「地産地消」を底上げへ

市は島の農水産物の加工、流通を支援して農水産業者の所得や地産地消(域内自給率)を底上げする6次産業化の取り組みを2021年度から始めた。

新年度では旧上野庁舎の活用を視野に民間主導の「加工・流通」の拠点づくりを目指す。6次産業新規参入者の加工機器などの購入費補助も検討している。農家や漁業者の生産情報を把握し学校給食などへの安定供給につなぐコーディネート機能の構築も後押しする。

6次産業化については、座喜味市長が「6次産業化をリーディング産業として位置づけて加工技術、販路の開拓を構築する」と公約に掲げていた。昨年4月には6次産業化に関する業務を担う産業振興局をスタートさせた。

加工・流通の拠点づくり(旧上野庁舎活用)については、生産者や加工業者、地域住民などと意見交換を行った。

市が加工(冷凍、冷蔵など)を支援する背景には、台風シーズンの夏場に地元産野菜が品薄になることが地域の自給率を下げる要因と指摘されてきたことがある。野菜などの加工(冷凍、冷蔵)は地元産品の周年流通や台風襲来時の急場しのぎに結びつき、地産地消を押し上げる力になる、と食糧の島外依存体質の改善を展望した。

台風や猛暑などがネックになっている夏場野菜の生産は厳しいとされるが、ピーマンやナス、キュウリ、アスパラガスなどを耐風性の強いハウスで栽培しスーパーと長年取引している農家もいる。夏場の味覚ゴーヤーも大きな需要が見込まれるという。同農家は「夏場野菜は生産者の育成が一番の課題」と指摘した。過去には地下ダムの水で土壌を冷やして、夏場にホウレンソウを栽培した事例があり、今後の可能性を実証した。

学校給食推進プロジェクトチームも昨年、設置した。あたらす市場は7月と9月の2回学校給食に冷凍マンゴーを提供した。伊良部漁協はマグロのフライやメンチカツなどを学校給食に提供できるよう準備を進めている。共同調理場ではトウガンやパパイア、モズクなど地元産食材の利用が増えつつあるように思えると話していた。

生産から加工、流通、消費まで多様なルートを示す市の6次産業化概念図は、地元農水産物を土産品につなぐルートにも着眼した。2017年度に空路宮古入りした観光客63万人の1人当たりの「土産、買い物代金」は約1万1000円で、総額は69億3000万円。その多くが島外産とされ、以前から土産品の「地産」が課題に挙がっていた。宮古空港土産品店の女性職員は、「取り扱っている菓子類の約半分は島外産」と指摘した。今回の加工機器への補助は地元土産品の生産増やコスト低減を多少、支援しそうだ。

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