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私見公論
2017年11月24日(金)9:01

【私見公論】「みなとまちづくりへの対応」/林 輝幸

 前稿では、「平良港の長期的課題と対応」として、国際クルーズの拠点形成や平良港での防災対策等について触れ、物流と観光支援での平良港の長期的な役割について述べました。そして、去った9月30日には、「平良港国際クルーズ拠点整備事業起工式」の開催に併せて「国際クルーズシンポジウム」を開催しました。これには多くの市民が参加し、宮古島の将来の観光ビジョンと課題について共感したことと考えています。内容については、先ず基調講演として、カーニバル社のポール副社長より、カリブ海のグランドターク島について紹介がありました。同島は人口約4000人の島ですが、カーニバル社の港湾開発で、同時2隻寄港で約6000人の観光客が来島するようになり、島のGDPが約300億円増加する経済効果が発現し、クルーズセンターでの直接雇用は400人を超えています。2020年以降は宮古島でも同様な経済効果があることを示唆しました。

 続いて沖縄公共政策研究所理事長の安里繁信氏をコーディネーターとして開催したパネルディスカッションでは、宮古島が抱える現状の課題として、バス・タクシー、通訳の不足、地元が儲かるシステム、新たな観光メニューや購買欲を高める商品開発も必要との意見がありました。観光産業は限られた範囲で考えるのではなく、「まち」をつくることと認識すべきとのことでした。これは、京都やハワイ等の観光先進地の状況からも明らかではないかと思います。

 次にインバウンドの方向性については、宮古島へのリピーター育成が重要とし、離島のデメリットを離島ならではの可能性と捉え、沖縄の離島としての宮古島ではなく、「宮古島」というブランドでプロモーションを進めるべきとの方向性が示されました。

 そして将来の観光ビジョンについては、高等教育機関誘致の必要性に始まり、トータル産業としての観光産業を捉え第一次産業への波及が議論となり、クルーズ拠点整備、トゥリバー地区へのホテル立地、加えて下地島空港の国際化を勘案すると確実に将来150万人の観光客が来島することを前提に、今後3年でまちづくりにしっかり取り組むことが重要であること、離島の弱みは離島の強みになることを認識してほしいこと等が提言されました。

 ところで、これまでの平良港の港湾整備は主に海域で防波堤や岸壁の整備を行うものでした。ところが、今後は、みなとまちづくりの提言も踏まえて、背後市街地と平良港を接続した形でのまちづくりが求められています。具体的な手法としては、官側による土地の規制緩和による港湾内への民間進出と逆にトゥリバー地区周辺も含めた陸側の乱開発防止のために規制強化等によるまちづくりの誘導が考えられます。一方、観光メニューや新たな土産物の開発を行う地元企業と国・県・市が連携することで、円滑な設備投資や新規創業支援を創出していく枠組みが必要でしょう。また、このみなとまちづくりの範囲ですが、港から派生する数十万人の観光客に対応するには西里通りや下里通りなどの繁華街も含める必要があるでしょう。

 現在の宮古島には不足するものが多くあり、課題となっています。それは、離島であるために人材や2次交通も他から簡単に持ってくることができないからです。ところが、みなとまちづくりを意識して陸域の開発やこれに連動した官民が連携することで、不足する多くの事象を宮古地域で対応することができれば、観光産業の経済効果は他の地域へ波及することなくそのほとんどが地域へ直接的に波及するでしょう。

 最後に私は平良港へ赴任し1年以上、クルーズ振興の効果を他の地域と比較して見てきました。博多や那覇には多くのクルーズ船が寄港していますが、そのインパクトを実感している市民は多くはありません。ところが宮古島ではおそらく多くの市民が間接的かもしれませんが実感しています。これは、離島である特性なのでしょう。官民連携によるみなとまちづくりが進めば、より大きな効果が宮古島にもたらせられると期待して最終稿とさせていただきます。

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