行雲流水
2019年4月11日(木)8:54
【行雲】(脱皮)
4月は、「平成」最後の月となった。来月からは「令和」に衣替えする。♪古い上衣よ さようなら-昭和20年代の青春歌謡「青い山脈」の一節だ。古い型から脱け出して生まれ変わる「脱皮」の比喩(ひゆ)であった
▼宮古の方言では、脱皮を「スディる」(R音はZ音で発音)と言った。古老は「正月の若水」のことを「スディ水」と称し、スディ水を浴びて若返った蛇の伝説を話していた
▼改元は、青春歌謡の〝わくわく感〟をかもし出している。紙幣の肖像も一新されるという。新しく登場する人物は、渋沢栄一(経済)、津田梅子(教育)、北里柴三郎(医療)だ。改元効果の一つだろう
▼〝脱皮ホルモン〟の分泌を促す「意欲」はどこから生まれるのか。答えは簡単ではなさそうだ。脳内物質とか、教育や自覚、経済環境などが絡み合ってくるからであろうか
▼「人間は万物の霊長である」ともいわれる。他の生物にはない優れたものを持っているにちがいない。パスカルは、それを「考える葦」にたとえた。人間はひ弱に見えても「考える力」を持っている、と。生きがいをみつける智恵と努力が成長を促すということであろう
▼新元号「令和」について、安倍首相は「典拠は梅の花を詠んだ万葉集。厳しい冬を乗り越えて春を呼ぶ梅の花のように、夢や希望の花を咲かせる時代であってほしい」と語った。令名、令嬢など「うるわしい」意味を冠した新元号だ。いさかいのない世の中であってこそ、色とりどりの花が咲き、智恵も努力も実を結ぶ。共生の時代を期待したい。(柳)