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行雲流水
2019年7月27日(土)8:56

【行雲流水】(老人)

 老人とは、と言われても定義があるわけではない。実年齢が65歳だろうが70歳だろうが老人と言われると機嫌を悪くする人もいる。そうだなそういわれる年齢になったかと自ら納得する人もあってさまざまだ。むかしの人は心のありようと見た目で年老いたかどうかを若者と比較する
 

  ▼中村幸彦氏の校注・訳「古今奇談英草紙 第四巻」(日本古典文学全集 小学館)から年寄りについての記述を抜粋してみた。流れるような文章を楽しむのも一興だろう

 ▼夜は臥さずして昼眠り、子を愛せずして孫を愛し、近比の事は記えねども、遠き事をよく忘れず、悲に涙なく笑ふ時涙あり。近きもの見えず、却って遠き物よく見ゆ。打撲に痛まず平日却って痛む

 ▼英草紙は中国の白話小説を基にした江戸時代の読本だが、この条は中国明時代の作品からの引用だという。明の時代は日本では大雑把に言えば室町時代から群雄割拠の混沌とした時代で、その頃中国ではどのような状態にある者を老人と呼ぶかといった概念は一般化していたということだろう

 ▼短いフレーズの中には年寄りの身体と心のありようが詰められていて現代でも通用するのではないか。夜寝ないで昼居眠りする、子より孫をいつくしむ、最近のことは忘れても古いことは忘れることは無い、悲しみに涙を見せなくてうれし泣きする。近くのものより遠くのものがよく見え、打ち身は痛むことないが常日ごろが痛む

 ▼年取ると心が不安定になり体の痛みも恒常化する。具体的な症状が認知症や関節痛といったところだろう。そうなったとき昔は家族が面倒を見たが、今の時代老人が頼れる家族はあるだろうか。(凡)

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