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ペン遊・ペン楽
2011年7月13日(水)23:00

おっぱいはいつまで飲んでいいの?/長堂 芳子

ペン遊ペン楽2011.7.14


 東日本大震災で、子供のミルクを作る水が無くて困っているというお母さまの声が報道されていました。これが母乳育児だったらそんな心配はなかったのに、とふと思ったものです。改めて母乳育児を見つめなおすきっかけになればいいのかもしれないとも感じました。


 私たちが関わる歯科検診に1歳半検診というのがあります。その検診の時にあるお母さまから「おっぱいはいつまで飲ませたらいいのですか?」という質問が出ました。聞くと、ご主人が仕事仕事で育児に協力してくれない環境なので、断乳をしたくても子供に泣かれると自分自身も精神的に不安になり、なかなか断乳ができないとのことでした。その頃、断乳は母子手帳でも1歳頃を推奨していましたので、こんなふうに1歳半検診で肩身の狭い思いをしていたお母さまが時々いらっしゃいました。今では断乳という表現も卒乳に変わり、卒乳も2歳頃までにできればいいと指導内容もゆるやかに変わってきています。

 皆さまは、沖縄の偉人で程順則(名護親方)という名前を聞いたことがありますか。程順則は若い頃、私費留学生として中国に渡り「六諭衍義」という道徳の本を琉球に持ち帰ってきました。その本は薩摩を通して幕府に送られた後、日本語に訳されて寺子屋の教科書として使われました。その後明治になってからは、教育勅語に影響を与えたと言われています。その「六諭衍義」の中に子供についてこんなことが書かれています。

 「乳を与えること三年、まだ手が離せない」
 偶然この記述を目にしたとき、私は驚きました。つまり、中国やひいては琉球王国時代、江戸時代では3歳頃までは母乳を普通に与えていたということなのでしょうか? それがいつの間にか、時代の流れで1歳頃になってしまった? 「産めよ増やせよ」運動が盛んに行われていた頃に、いつまでも母乳を与えていると次の出産に影響がでると判断したのでしょうか。

 哺乳のことを動物の世界で見てみますと、ゴリラは哺乳動物で、人間に最も近い動物だといわれています。ゴリラの場合は3年半から4年半周期で子供を産み、その哺乳期間は2年半から3年ほどだそうです。先に書いた「六諭衍義」の内容そのままがゴリラの世界にあてはまりませんか。昔の人は自然界に学んだのでしょうか。あるいは、人の体に無理のない受胎サイクルを考えるとおのずとそうなるのかもしれません。

 沖縄のある芸能人の方が、雑誌で小学校に上がってからもおっぱいを飲んでいたことを書いていました。新聞の投稿欄でもある年配の男性が「学校から畑に行くと、母親はその時間を見計らっておっぱいタイムの準備をして待っていた」と投稿してありました。お二人とも年代からして戦前の頃の話。大らかですね。

 卒乳は母親と子供がお互いに納得した時期でいいかと思いますし、いつかは誰でも卒乳できます。周りも「まだおっぱい飲ませているの?」と否定的な言葉は避けて温かく見守ってあげてください。
 (宮古ペンクラブ会員・歯科医師)

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