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行雲流水
2011年8月1日(月)21:52

タゴール(行雲流水)

 詩集『迷える鳥』で、「すべての嬰児は神がまだ人間に絶望してはいないというメッセージをたずさえて生まれてくる」と書いたインドのタゴールが生誕して、今年で150年を迎える


▼同詩集のなかで「われ存するということが不断の驚きであるのが人生である」とも書いている。人生肯定の発露である。また、「人間の歴史は虐げられた者の勝利を忍耐強く待っている」とも書いている。彼の一貫した姿勢でもある

▼タゴールはベンガルの名門に生まれたが、貧しい農村生活に触れて農村改革を志すとともに詩や小説や評論を盛んに書いてインドの目覚めを促した。1913年には、東洋ではじめてのノーベル文学賞を受けた。また、インド独立のためにも力を尽くし、非暴力・不服従で闘ったガンジーとともに国父として仰がれている。彼の詩の一つがインドの国歌となっている

▼彼は、東洋と西洋のかけ橋となって諸国を歴訪、日本にも立ち寄り、講演(演題「日本に寄せるインドのメッセージ」)を行っている。講演では、近代日本の歩みに賛嘆を寄せる一方で深い憂慮を示した

▼日本の行き方が西欧近代の一面にすぎぬ物質的侵略的文明のみを模倣し、東洋の伝統的人間性を見失っていることへの憂慮であった。西欧をアメリカと置き換えてみると、タゴールの警告がなおいきていることが歴然とする

▼タゴールの詩は語る。「しずかに、わが心よ、これらの巨きな樹たちは祈祷者です」。歴史や、人々の生きざまを見てきた巨木は何を祈っているのだろうか。

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