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旧暦:3月15日 大安 丁 
ペン遊・ペン楽
2012年8月22日(水)22:34

吾輩は犬である(パートⅡ)トム&ベティー/下地 昭五郎

2012.8.9 ペン遊ペン楽


 私ことベティーがこの家に同居して8カ月になります。何でも私が入居する3カ月前に太郎というペット(人間の造語)が原因不明の腸炎にかかり彼の世へ旅立ったようです。それでご主人が寂しさに耐えかねて大金(?)まではたいてペットショップで求めて当家(下地)に入居したのが私の来歴です。


 実は私はプードルとスピッツのハーフらしい。どちらかというとプードル系に近いらしい。純血統種のプードルよりやや小さく黄金色の毛色で垂れ耳で足が長いのが私のチャーミングポイントです。それに細かい毛が飛び散らないのもペットマニアから喜ばれているようです。ということでこのご主人さまにも愛され住み心地良い日々を過ごしております。

 けれども最近、あまり見慣れない新参のチビが同居するようになって事情が少し変わってきました。ご主人の話によると、どうやら亡くなった太郎の実弟のようです。太郎の元のオーナーがご主人の気持ちを慮って譲ってくれた由。私としても入居を拒否する理由も権利もない身の上ですのでなんとか自重を決めております。

 このレイト・カーマーの名前はトムといいます。私がベティーなので語呂合わせがよいということでつけたらしいですが、ご主人のセンスの程度がわかるというもの。私とこの子の違いは品性の特徴にあります。自分で言うのもなんですが、一口で言いますと「優雅」と「粗野」程の落差があります。一緒に住んでみないと分からないと思いますが。先ず、食事マナーですが、いかにも粗野で周囲が大迷惑です。同じ分量ほどの食料をトムは一気にがつがつ平らげ私のものにあさましくも食指を伸ばすのです。もちろん大戦争。私の方が遠慮するのですがそこはご主人がちゃんとカバーしてくれます。

 容姿は彼がうらやましいほど真っ白な毛並みで覆われていて悔しいけど脱帽。私の方はルックスもオーソドックスです。まあとにかく、容貌と言えば、鼻ペチャで横顔は断崖絶壁のごとく不細工。蓼食う虫も好き好きと言いますが、ご主人の物好きも狂気の沙汰。同居は不本意ですが、ご主人の希望でもありますのでそこはお互いにセルフコントロールして平和裏に生活しなければならないと覚悟を決めておりますが、とかく折り合いをつけて生きていくのは難しいものです。

 ところで、マスメディアの報道によると人間社会でも『絆』の復権が叫ばれております。
 「経済至上を目指す合理的な社会では文学的に生きればいい。『彼と一緒に暮らすならどんなに貧乏してもいい』という人だっている。これからは『情感』でしかつかめない部分で歩むことです」と哲学者の内山節という学者が語っておりますが、まさに言い得て妙です。私もトムの横着な態度や目に余る悪戯は愛嬌で受け止めて優しく、そして文学的にというより散文的に生きてみたい。まあとかく何かと世知辛い世の中です。やはりそこは慎みと感謝の気持ちで絆を大切に生きたいものです。そのために察の美学を徹底するのが賢明と思っております。トム&ベティーです。
(宮古ペンクラブ会員)

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