生活保護について(1)/下地 徹
私見公論48
最近マスコミ等で話題になっている生活保護制度について、長年生活保護行政に関わった者の一人として生活保護制度に触れたいと思います。
一、生活保護制度の沿革
恤救規則(明治7年)に始まり、救護法(昭和4年)、生活困窮者緊急生活援護要綱(昭和20年12月)、旧生活保護法(昭和21年)、現生活保護法(昭和25年5月)、社会福祉事業法(昭和26年)、現社会福祉法。
二、日本国憲法・第25条、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
②国民はすべての生活部面について、社会福祉・社会保障および公衆衛生の向上および増進に努めなければならない。
この日本国憲法は、国および国民の責務が明記されている。国の責務として、社会福祉の基本となる生活保護法を制定し施行した。
ヨーロッパの社会福祉は「ゆりかごから墓場まで」と進められてきた。日本の生活保護制度は赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときから加算を付けて墓場までを基本理念として、世界に誇れるきめ細やかな福祉制度と言われ、現在、日本国内で施行されているすべての福祉法は生活保護法が基本である。国は、国民の生存権を保障する最後の「とりで」としての社会保障制度全体の基本をなす制度である。
三、生活保護法
第1条(目的)この法律は日本国憲法第条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
第4条(保護の補足性)保護は生活に困窮する者が、その利用し得る資産・能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
②民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養および他の法律に定める扶養はすべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
③前項の規定は急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
※法第4条第1項の「あらゆるもの」とは、日本国内のすべての法律、自助努力をしても最低限度の生活維持が困難であるとのことです。この法律で第4条の保護の補足性こそが「生活保護法」の「要」であり、どの福祉の法律にも活かされている。
四、生活保護制度
(イ)基本となる六つの原理(法第1条~第4条)の条文の中にある、実施上の四つ原則(法第7条~第10条)の各条文の中にある。
(1)生存権保障の原理(法第1条~第3条)
(2)無差別平等の原理(法第2条)
(3)最低生活保障の原理(法第1条~第3条)
(4)補足性の原理(法第4条)
(5)自立助長の原理(法第1条)
(6)国家責任の原理(法第1条)
(ロ)実施上の四つの原則
(1)申請保護の原則(法第7条)
(2)基準および程度の原則(法第8条)
(3)必要即応の原則(法第9条)
(4)世帯単位の原則(法第10条)
(ハ)衣食住、その他日常生活の需要を満たすための生活扶助を中心に八つの扶助がある。
(1)生活扶助、(2)教育扶助、(3)住宅扶助、(4)医療扶助、(5)出産扶助、(6)生業扶助、(7)葬祭扶助、(8)介護扶助
以上のように、八つの扶助があります。いずれか一つの扶助でもよいし、他の扶助と併給して受給することもできる。