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ペン遊・ペン楽
2012年11月7日(水)23:49

宮古島市史」通史編/仲宗根 將二

『みやこの歴史』を薦める

2012.11.8 ペン遊ペン楽

 

1・宮古研究の最高水準

 宮古島市教育委員会はこのほど、宮古島市史通史編『みやこの歴史』を刊行した。明治以来の平良・城辺・下地・伊良部・上野の5市町村合併による宮古島市誕生(2005・10・1)にともなう初の修史事業である。翌年6月から、17人の編集委員が5年余分担・執筆し、論議を重ねての成果である。
 現段階における宮古研究の最高水準を示すものといえよう。


2・地域性豊かな…

 巻頭のグラビアは、「写真でみる〝ばんたが みゃーく〟」で、40頁、百数十枚の大方カラー写真である。初めに宮古の全体像をみせるためであろう、冒頭に、1646年「正保の国絵図(宮古)」と、2012年現在の「空から見た宮古」が示されている。三百数十年の時間と空間をへだてた宮古が比較、対照できる。過去から、現在と未来を考える、この編集姿勢は全巻を通して一貫しており、心にくいばかりである。
 本論は、「序説 宮古の風土と人」で、宮古史の時期区分」をこころみるとともに、自然や民俗を踏まえた総論的内容を示し、このあと五編構成で、宮古圏域の歴史的展開を具体的に跡づけている。

3・「琉球文化圏」形成

 第一編「先史・グスク時代~南琉球先史文化からグスク文化へ」は、縄文・弥生文化の影響を受けていない地域性豊かな宮古・八重山にふれ、第二編「古琉球~統一へ動く宮古」(12世紀以降)で、海流と季節風で各地から渡来したであろう人びとによって始まった集落が次第にふえ、宮古としてまとまっていく過程で、沖縄島の王権と結び、「琉球文化圏」形成の一翼を担っていく。
 第三編「近世~薩摩藩・琉球王府統治下の宮古」(1609年~)は、これまでの琉球王府の間接統治から、幕藩体制のもと、琉球王府の直接統治へと変わり、薩摩藩・琉球王府両者への貢租(人頭税)確保を至上課題とする諸制度に整備される。
 第四編「近代~琉球処分から終戦までの宮古」(1879年~)で、琉球は明治政府の強権によって近代統一国家日本に組み込まれた。琉球処分(廃藩置県)であり、沖縄県の誕生である。日本は欧米諸国に追いつくために、殖産興業と富国強兵を二大基本政策に帝国主義国家として成長していき、日清・日露の戦争をへて、「アジア・太平洋戦争」へと戦火は拡大し、敗北して近代の幕を閉じる。最後の激戦「沖縄戦」は「鉄の暴風」と呼ばれ、多くの命と形あるものの大方を失った。
 さらに第五編「現代~戦後の宮古」(1945年~)は、米英軍の連日の爆撃で焦土と化したなかで、国・県との連係はなく、「自立」を模索しはじめるが、戦後初期には「文化立島」「楽土建設」などが標榜されている。米軍政下の宮古、「琉球政府」時代、復帰後の県政時代、市町村政の変遷など、政治、経済、産業、教育、文化、祖国復帰運動に代表されるさまざまな民衆運動や5市町村合併に至る経緯等が詳細にまとめられている。

4・郷土学習の一環に

 編さん委員会の事務局は生涯学習振興課で、委員会は四つの小委員会で執筆者をまじえて議論を重ね、数回にわたって修正を求められた事例もある。「市史の読者」は市民であり、市民に分かりやすく、その上で研究者の批判にも耐え得るとの趣旨からである。その分、執筆者はもとより、事務局のご苦労は察して余りあるものがあったろう。
 合併前の6市町村における修史事業等の成果を踏まえ、最新の宮古研究の成果を盛り込んだ『宮古島市史』である。一人でも多くの市民が目を通していただきたい。とりわけ小、中、高校の先生方が郷土学習の一環として活用されるよう願うものである。
(宮古ペンクラブ会員)

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