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私見公論
2013年2月1日(金)23:27

エコアイランド宮古島の取り組みについて/大金 修一

私見公論54

 わが国は、現在、さまざまな難局に面している。特に3・11東日本大震災以降のエネルギー政策において、基幹電源であった原子力発電は福島第一原発事故以降、その方向性を大きく見直されて一部を除いて停止状態となり、変わって基幹電源となった火力発電はLNGや石油等の燃料を海外に依存していることからわが国の国富は海外へと流出し、先に財務省が発表した2012年の貿易統計では、わが国の貿易赤字は原発停止による火力発電向け化石燃料の輸入の増に中国等への輸出減も相まって、過去最高となる6・7兆円にまで膨れ上がっている。一方で、エネルギーの自給率向上や地球温暖化対策の観点から太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が期待されており、昨年7月の再生可能エネルギーの固定価格買取制度の開始により、太陽光発電等の一部のコスト高の電源については政府の強烈なインセンティブによりその導入に拍車が掛っているが、自然由来の不安定な電源であるため基幹電源としての活用は程遠い状況にあり、スマートグリッド等のイノベーションが期待される。また、わが国の地球温暖化対策はその技術力により世界をリードしてきたところ、3・11以降の化石燃料の大量消費もあって減速傾向にあり、前政権下で打ち出された温室効果ガスの削減目標は見直されようとしている。


 わが国は極東に位置する資源の乏しい小さな島嶼国であり、それを先人たちの知恵と努力によってあらゆる難局を乗り越えて経済大国となったが、今後のわが国のエネルギー政策は、島嶼国であることを再認識した上でそれを活かした施策展開を考えていく必要がある。

 そういった中、最近各方面から注目されている島がある。宮古島である。「宝の島」、宮古をそう呼ぶ方が多い。島嶼国の離島県のさらに離島、宮古は一見ハンディだらけのようにも思えるが、世界的にも類を見ない規模の地下ダムや再生可能エネルギーの活用等、島の構造や地域の資源活用を考えた取り組みが行われており、今後のわが国の方向性における一つのヒントになるのではないかと考えている。

 宮古島市は2008年3月に「エコアイランド宮古島宣言」を行っている。これは急速な社会資本整備やそれに伴う産業経済活動の活発化、ライフスタイルの変化等々により島の生活の豊かさが増す一方で、島の自然環境への負荷は地下水汚染や海洋汚染等のかたちで現れはじめたことから、循環型社会の構築、環境保全の推進、産業振興の共通認識の下、「いつまでも住み続けられる豊かな島」を目指して宣言したものである。具体的には地下水保全、海洋保全、ゴミ問題、地球環境問題等々の6項目からなっており、これらをしっかり行うことによって未来へバトンタッチしていこうという素晴らしい宣言である。

 その中でも地球環境問題の取り組みに関しては、2009年1月に内閣総理大臣より「環境モデル都市」の認定を受けている。「環境モデル都市」とは、2005年の京都議定書の発効、2008年からの第一次約束期間の開始を受けて、政府は1990年比マイナス6%の目標を達成すべく、その施策の一つとして当時の福田内閣が発表したものであり、低炭素化の実現に向けて温室効果ガスの大幅削減などの取り組みを行うモデル都市として、政府より認定を受けた自治体のことである。

 現在は宮古をはじめ横浜市、北九州市、京都市など13市町村が認定を受けており、宮古は県内はもとより、国内でも唯一の島嶼型としての認定を受けている。他方、この地球環境対策の取り組みは概念的なものであって、実生活で感じることのできないものであることからなかなか理解できないものである。この取り組みを単なるモデル都市としてのアクションだけではなく、地域に必要な戦略として進めていくことが重要であると考えている。

 大金 修一(おおがね・しゅういち)1973年茨城県生まれ。94年経済産業省入省。エネルギー政策や地域経済産業政策等に従事。10年4月、経済産業省より沖縄県宮古島市役所に出向。現職。エコアイランド推進課長。バイオマスや自然エネルギー等を活用した宮古島のエコアイランド推進に奮闘中。

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