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ペン遊・ペン楽
2013年4月24日(水)22:06

「んみゃーちー」/松谷 初美

2013.4.25 ペン遊ペン楽


 東京の同じ町内に住む宮古が大好きな友人に「息子の先輩のお母さんが宮古島出身だって。コーヒー屋さんをしているから今度行かない?」と誘われ、先日行ってきた。


 井の頭線のとある駅にあるコーヒー屋さん。カウンターで友人が名前を告げると、奥から宮古かーぎの人が。やぱーやぱの素敵な笑顔で迎えてくれたのは、長島まり子さん。聞けば、城辺の砂川出身で高校の2年後輩だった。

 初めて会ったとは思えないほど話がはずむ中で、主人も宮古が大好きだからと呼んでくれ、一緒になって宮古の話題で盛り上がった。

 ご主人は仙台の出身とのこと。結婚するのは大変じゃなかったですか?と身に覚えのある私は聞いてみた。やはり、宮古の両親からはすぐにOKは出なかったという。ご両親にしてみたら、どこの馬の骨か分からないというところだったのでしょう。「二人で宮古に来たら、結婚相手だと周りに思われるから、まずは、ひとりで来なさい」と言われ、ご主人だけ宮古へ。

 相当な勇気が必要だったに違いない。「緊張しながら家に行くと奥からおばあさんがニコニコと笑顔で出てきて『んみゃーちー』と言われたんですよ」「『んみゃーちー』と言って迎えてくれたんですか!」「方言の意味は分かりませんでしたが、歓迎をされていることは分かってホッとしました」。

 内地の人に方言で「んみゃーちー」と言うこともさることながら、この言葉の中にはおばあさんのすべての想いが込められているような気がして、目頭が熱くなった。

 どういう人か分からないけど、孫娘の選んだ人である。その人が一人で来るというのだ。うれしくて、心からの言葉として、「んみゃーちー」が出たのでしょう。なんて優しく温かい言葉だろうか。
 それから話はとんとん拍子に進んで、結婚。しかも、宮古で当時(27年前)でも珍しい家での結婚式をしたそうだ。家で料理も作ったとのこと。「雨戸をはずしてまな板にしているのにはびっくりしました」とご主人。(昔はそうでしたよね)

 「最初の言葉が『んみゃーちー』ですから。これは宮古の方言を勉強しなくちゃと思いましたよ」と、佐渡山正吉さんの『沖縄・宮古のことわざ』や佐渡山政子さんの『んきゃーんじゅく』同じく『ゆがたい』の本を持ってきたのにはびっくりだった。

 結婚後は息子さん二人を連れて、家族で年に3回くらい宮古に帰っていたとのこと。そして、宮古民謡のカセットテープや下地勇さんのCDを買い、宮古方言を勉強しているという。

 友人とのつながりで思いがけず出会った長島さんご夫妻。お二人の人柄が伝わってくるいろいろな話に驚くやら感動するやら。まさかこんなに深い話ができるとは思ってもみなかった。まして「んみゃーちー」の言葉に感激しようとは。

 みやこふつてぃ、まーんてぃ あずーあずの ものやー(宮古方言は、本当に味わい深いものですね)。

 夕方になって店内が混雑してきた。友人と二人、お腹いっぱい、心もいっぱいになってご夫妻のお店を後にした。

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