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私見公論
2013年6月14日(金)22:45

海を楽しむ皆様へ/粟國 雅博

私見公論73


 夏本番も間近に迎え、いよいよ本格的な海洋レジャーシーズンになり、海で遊ばれる機会が増えてくる季節だと思います。皆様にはあまり馴染みのない話かもしれませんが、本日は潮干狩りなどで海の生物を採捕するにはいろいろなルールがあることをお伝えしたいと思います。ルールをお伝えするその前に、「漁業」とはどういうものであるのかをご説明します。


 漁業とは、漁業者(宮古方言でインシャー)が営利目的で水産動植物を採捕、または養殖をすることを言います。簡単に言えば、自分の生計を立てるために仕事で海の生物を捕る行為と考えてもらえれば良いと思います。漁業を大きく分類すると、①漁業権漁業、②許可漁業、③自由漁業の3種類に分けられます。①漁業権漁業は知事から漁業権の免許を受けた方などでなければ基本的に営めません。②許可漁業は、農林水産大臣や都道府県知事の許可がなければ営めません。③自由漁業はそれ以外の漁業を指し、基本的に漁業者であれば営むことができます。

 一方、漁業者ではない方(以下「遊漁者」とする)がレジャーとして行う潮干狩りや、釣りなどを行うことを一般に「遊漁」と言います。遊漁者が行う「遊漁」は、漁業者が仕事で行う「漁業」とは全く別物であり、さまざまな制限があります。宮古島の場合を例にとって説明すると、「遊漁」の場合は、アーサ、モズク、ウル、シャコ貝類、タカセ貝、夜行貝、サザエ、マガキガイ(ティラジャ)、シラヒゲウニ、イセエビ類、タコ類、ナマコ類などを勝手に捕ってはいけないこととなっています。

 これは、漁業権漁業の共同漁業権(一定の水面を共同で利用して漁業を営む権利)対象種として指定された水産物を捕ることにより、漁業者の漁業を営む権利を侵害する恐れがあるからです。また、「遊漁」では、発射装置の付いたヤスや水中銃、潜水器具、網(タモなどは除く)などを使用して水産物を捕ることも認められておりません。これは、「沖縄県漁業調整規則」という規則の中で、「遊漁者等の漁具漁法の制限」という規定があり、遊漁者が使用できる漁具漁法を定めています。ここで定められた方法以外で水産物を採捕すると、当規則に違反する可能性があります。このように、遊漁者が海で遊ぶ場合に守らなければいけないマナーやルールがあるのですが、あまり理解してもらっていないのが現状です。

 宮古島でも遊漁をされる方々と漁業者とのトラブルが増加傾向にあります。最近の事例で言えば発射装置を有したヤスや水中銃を用いてサザエやイセエビ類を採捕し遊漁者が告発され厳しい処分を受けました。また、釣り人が餌として大量のウニ類を採捕し厳重注意を受けたこともありました。漁業者は資源を保護・育成するため、産卵期に禁漁期間や禁漁海域を設けたり、稚魚や稚貝を放流するなど資源を増やす努力もしています。また宮古島市と宮古島・池間・伊良部漁協が協力して毎年稚ウニの放流を行っています。そのほかにもタマン、ガサミ、シャコ貝など種苗の放流等も取り組んでいます。

 宮古島では昔からサニツなどの伝統行事や、アーサ摘み取りなど季節の風物詩として海と接する機会が紹介されたりします。また宮古島は県外と比べると海の幸も身近に存在し、遊漁者でも簡単に貝やエビなどを捕ることができるかもしれません。われわれ漁業者は、漁業権を主張して海で親しむことをすべて禁止するものではありません。しかし、資源状態が悪化している種が多いため、原則的には漁業権の対象種は、見て楽しむ程度にとどめていただければと思います。漁業者は水産資源の恵みを受けて漁業を営み生活の糧としております。同時に、ただ利益を得るだけではなく、資源を適切に管理する役割を担っているのです。

 漁業権の趣旨と漁業者の立場をご理解いただき、ルールとマナーを守って海遊びを楽しんでいただければと思います。

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