04/24
2024
Wed
旧暦:3月15日 大安 丁 
美ぎ島net
2013年8月11日(日)9:00

「笑顔」の交流始まる/福島の保養チーム来島

5泊6日の旅に宮古島満喫/「うむい宮古島保養プロジェクト満月」実行委員会

 東日本大震災と原発事故で甚大な被害を受けた福島の親子を保養のために宮古島に招く計画を立ち上げた同実行委員会(下地昌伸実行委員長)は、7月24日夕、初めての保養チームを迎えた。福島県二本松市を中心に8家族35人が5泊6日のホームステイなどでゆったりとした時間を過ごし多くの市民と触れあった。滞在中、晴天に恵まれ、家族は海で泳いだり、月夜を楽しんだり、ライブや夏祭りに招待されるなど初めての体験に、島の生活や風景を満喫した。29日、帰りの空港ロビーでは真っ赤に日焼けした親子が顔をそろえ、見送りに来た島の人たちとの別れを惜しんでいた。


親子保養10年を目指す

 同実行委員会は「うむい宮古島」「しましまピース」「復興支援ライブ」の3団体を中心に多くの市民、団体、学校、事業所などの協力で実現した。下地委員長は「私たちは、福島の子どもたちのために何かしたいという気持ちでこのプロジェクトを始めた。少なくとも10年は継続させたいという目標がある。10年という時間の中に活動の輪がどんどん広がり、お互いの交流も深まるものと期待している」と話す。

8家族35人来島

 今回の参加者は高橋家(5人)、鹿目家(4人)、佐々木家(3人)、出川家(5人)、松本家(5人)、佐藤家(4人)、徳江家(4人)、関家(5人)。子どもたちは、生後5カ月から中1の子まで20人。福島では放射能の影響で禁じられている水遊びや土遊び、花摘み、昆虫採集など、これまで制限されていたことが自由にできることから、伸び伸びと自然を謳歌していた。

友利自治会と交流


友利集落センターで集落の皆さんと交流、焼き肉と泡盛で一気にうち解けていた

友利集落センターで集落の皆さんと交流、焼き肉と泡盛で一気にうち解けていた

 三日間は友利自治会の協力で、集落内にある、エコハウス、ペンション南海美、ばんが家に分泊、その夜は自治会とのバーベキューが催された。公民館広場では青年会などを中心に交流会が進められ、8家族のお父さんたちとお母さんたちが紹介された。妻と子どもたちが青森に避難しているという松本家の父親・徹也さんは、1カ月半ぶりに会うという末っ子の優ちゃんを抱きながらあいさつ、家族が一緒に過ごせる幸せをかみしめていると述べた。

ホームステイで家族に


ホームステイ先の家族と運動会に参加した関家族

ホームステイ先の家族と運動会に参加した関家族

 残り二日間はホームステイでそれぞれの家で懇親を深めた。中でも、7歳を頭に3人の子をもつ来間島の砂川宅では関家族5人が宿泊、同世代の子どもたちと兄弟のように過ごした。二日目は保育園の運動会にも参加、親子で玉入れや綱引きを楽しむ場面も見られた。関夫妻は「子どもたちがこんなに元気に過ごす姿を見るのは久しい、これが日常なんですよね」と話していた。

座談会「福島の今」


座談会「福島の今」が行われ、各家族から深刻な現実が伝えられた=27日、宮古バプテスト教会

座談会「福島の今」が行われ、各家族から深刻な現実が伝えられた=27日、宮古バプテスト教会

 27日は午後4時から宮古バプテスト教会で座談会「福島の今」が行われ、それぞれの家族が深刻な現実を伝えた。浄土真宗の境内で住職の夫と共に幼稚園を運営する団長の佐々木さんは「地震で一切の情報網が断たれ、翌日爆発事故が起きていることさえも知らなかった。上空に放射能が漂っていたときに雨と雪が降ってきて被爆する人も出てきた。新潟で約二カ月暮らした。戻ってからの生活は、放射能で汚染された水や食べ物、空気の測定の毎日、今は県外の支援に頼っている状況。生きる希望を失って中絶や自殺者も増えている。正直、大人たちが疲れ切っている」と深刻な現状を訴えた。
 事故当時、臨月だった松本さんは、夫を残し上の男の子2人を連れて実家の青森に逃げた。「生まれた子を家族みんなで祝いたかったのに、それもできず、母乳は大丈夫だろうか、そんなことを考えていた。3番目が生まれて3カ月後に福島に戻ったが、そこは風を感じることも花を摘むこともできず、1年後にまた青森に戻り今は夫と離れて暮らしている。正直言って答えが見つからない。残る者も避難した者も苦しい」と涙ながらに話した。


「第二の古里に」

 それぞれの家族が、2年4カ月の体験を話し、子どもたちにとっていかに保養が大切か、また大人も同様、疲れている心身を癒やせる場所があればありがたいと口をそろえた。鹿目さんは「福島で子どもをつくっていいかどうか夫婦で悩んだ。ここで伸び伸び遊んでいる子どもたちの姿を見て、生まれてきてくれて本当によかったと思える。宮古島はこの子たちにとって第二の古里になるだろう」と話し、感謝を込めた。

カテゴリー一覧

ID登録でパソコン、タブレット、スマートフォンでお手軽に!