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2013年10月6日(日)9:00

瑞慶山 昇さん(56歳)/沖縄県立美術館副館長

古里の風景が癒やしに


瑞慶山 昇さん

瑞慶山 昇さん

 これまで華やかな画歴をもち、2年前からは副館長として美術館業務の企画運営の側に立った。2007年11月、沖縄県では戦前戦後を通じて初めての県立美術館が開館した。明治以降の美術を体系的に収集し、展示できる唯一の施設。その中での副館長の責務は重い。「将来のビジョンを明確にし、その実現に向けて実行できる環境を整備しなければならない。開館から6年目は、人の一生に例えたらまだ幼少期。それだけにやりたいことが山ほどある」と話し、学芸員と協力しながら一つ一つの課題に取り組んでいる。

 活動業務は、美術に関する調査研究、作品収集、作品の保存修復、展覧会の企画開催、教育普及活動など。昨年は、古里の画家を調査、「宮古島の絵画同人『二季会』の画家1-下地明増と本村恵清」を冊子にまとめ、美術館研究紀要第3号としてまとめた。2氏の作品のほとんどが公開され、これまであまり知られなかった宮古島の美術の歴史に灯がともった。「先輩たちの足取りをたどるのはとても楽しくも勉強になった」と話し、今後その緻密な調査紀要は貴重な資料となろう。

 画歴は「沖展」絵画部門奨励賞(79年)を皮切りに、版画部門会員賞、「県芸術祭」美術部門奨励賞(80年)など次々と賞を総なめ、「琉石美術賞展」では91年に大賞を受賞、その実力を確固たるものにした。現在行われている「りゅうせき美術コレクション展」では瑞慶山さんの大賞作品も展示され、テーマ「夜の幻と夢の中」は、徹底した具象画で不思議な世界を醸し、シュルレアリスム的な画面構成は鑑賞者を魅了している。会期は来年1月まで。「沖展」では、絵画・版画部門会員として審査にあたる。

 絵心は、幼少の頃、兄・隆司さん(元美術教師)の影響が大きいという。「当時、絵の好きな兄が、セザンヌやモネなど印象派の画家の絵を切り取って壁や障子にベタベタ張ってあった。それを興味深く見ていたことが根っこにある」と笑う。宮古を離れて40年近いが年2回は必ず母親のいる実家へ帰る。「青い空とサトウキビ畑の向こうに見える青い海の風景が心底癒やされる。定年までに学校現場で宮古島勤務ができたら幸い」と表情を緩める。

 瑞慶山 昇(ずけやま・のぼる)1957年4月16日、平良字下里生まれ。宮古高校卒。九州産業大学芸術学部美術学科油彩画専攻卒。美術教師として大宜味中を皮切りに金武中・平良中・本部中を経て、92年県立博物館勤務(美術工芸担当学芸員)、2007年県立総合教育センター勤務(美術科担当指導主事)、09年県立博物館・美術館(主任学芸員)勤務、11年県立美術館副館長に。英子さんとの間に1男2女。

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