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私見公論
2014年5月23日(金)9:00

観光入域客数50万人突破に向けて(3)/下地信男

私見公論95

 平成25年度の本市への観光入域客数は40万391人となった。前年度に41万人余の過去最高記録を達成しただけにその数字には物足りなさを感じるというのが率直なところである。観光関係者の努力により40万人の大台はクリアしたものの、右肩上がりに勢いよく伸びないのは観光業界が地域間競争の激しい業界だからだ。日本国民の旅行回数は年平均1・5回と試算されているので、1年間に1億9千万人もの国民が旅行に出かけることになる。これらを全国の観光地がわが地域へ取り込もうとさまざまな手法でその獲得に必死となっている。本市に限らず、交流人口を増やして地域の活性化を図ろうとする地域にとっては、観光客の誘客は最大にして喫緊の課題であり、そこに最大限のエネルギーを注いでいる。

 一方、観光客のニーズは多種多様で旅行先の選定は社会の動きに大きく左右される。マスメディアへの登場や全国区となる話題が上ると敏感にその方向(地域)へと反応する。沖縄観光においては沖縄海洋博覧会がその起爆剤となり、隣の八重山は新婚旅行ブーム期に小柳ルミ子の「星の砂」が大ヒットを飛ばして一気に知名度が高まった。ごく最近では岩手県久慈市はNHK朝ドラ「あまちゃん」のロケ地として話題が高まり人気上昇中である。

 このように観光客を伸ばすためには、地域の話題性を創出し、他の地域との差別化を図りながら訪れてみようとする「動機付け」が欠かせない。大事なことはこの魅力が一過性のものでなく、継続的なものとしなくてはならないことにある。常に地域の「魅力」に磨きをかけ、旅行者の「関心」を得るための高いアンテナを持って発信し続ける必要がある。

 ところで、観光の基本は、「魅力づくり」「誘客活動」「受入態勢」にある。これらの取り組みがしっかり実を結んでこそ観光地として花開くことができる。まず、本市の魅力について、その最たるは「青い海と白い砂浜」である。東平安名崎、与那覇前浜の白い砂浜、伊良部牧山展望台から望むエメラルドグリーンの海、八重干瀬やダイビングで出合う宮古ブルー等は世界に誇れる自然景観である。宮古島の観光はこれらの「海」を基調としてきた。

 加えて最近は環境モデル都市として先進的なエコ関連事業の取り組みが評価を受け、自治体や民間企業関係者の視察など入域客の増加に寄与しており、観光資源としての位置づけがなされている。今後は実証実験の域にあるエコの取り組みを市民レベルの活動へと展開させ、島全体を「エコの島」にすることで観光地としてさらに磨きがかかることになる。

 「誘客活動」について、その具体的な取り組みとしては旅行業界やマスコミへの宮古島向け観光商品の開発やセールスが主となる。近年は自ら旅行プランをつくり、仲間同士のぶらり旅が主流となりつつあるが、本市旅行者へのアンケートでは旅行商品を購入する形が依然として根強い。したがって、旅行業界に太いパイプを築けるか否かが誘客の大きな鍵となる。そこで観光協会を中心に商工会議所、行政が連携して、業界に積極的にアタックしているところである。

 今後は国内に止まらず、韓国・台湾等の東アジア向けの取り組みを強化する必要がある。韓国からはこの1年間で4度のチャーター直行便の就航が実現し約1100名を招き入れた。宮古島の海やゴルフ場は韓国富裕層にも認知が広がりつつあり、今後も伸びる可能性のある市場である。

 海外の市場をターゲットとしていくと新たな「受入態勢」の課題も見えてくる。通訳等の人材育成、観光案内サインの整備等、何より旅行関連事業者の海外から受け入れるための「意識の改革」が必要であろう。いずれにしても海外に開かれた観光は時代の要請である。宮古空港におけるCIQ(税関・出入国管理・検疫)の整備方針も決定した。大型クルーズ船の受入バースの整備も着々と進んでおり、受入態勢の強化は本市の観光に弾みをつけることとなる。これらに加え市民の温かいホスピタリティで訪れる人々を歓迎する姿勢が定着していけば、本市の観光入域客数50万人の目標達成は近づいてくる。
 (しもじ のぶお・宮古島市観光商工局長)

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