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行雲流水
2016年6月25日(土)9:01

【行雲流水】(ナビガース)

 クマゼミ、平良ではナビガースという。本格的な夏の到来を告げるセミだ。6月の今の時期から7月の24、25日まで朝の短い時間に「シャーシャーシャー、ジー」と一斉に大音響で鳴きだすのがかのセミの特徴だ


▼この時期は梅雨も明けて作物を植え付ける畑仕事が始まる時でもある。そう遠い時代ではないが芋を主食にしていたころ、夏植えの芋のナエを刈り取るのは女、子供の仕事であった。日の上がる前に畑に出てセミが鳴きだすころには一仕事を終える

▼セミは、人が動き出す前に大仕事を始める。羽化だ。地中からはい出した幼虫は天敵を避けて薄闇の中で羽化する。人が畑仕事をしているころ羽化したばかりのセミは真っ白であったが黒光りする体に変わり縮れていた翅はしっかりと伸びきるがまだ声は上げない

▼太陽が照りだすのを身動きせずに待ってそれから鳴きだす。一匹が声をあげると周辺からも同調して一大合唱となる。しかし今年は様子が違う。聞こえてくるのは遠くから大合唱には程遠くまばらにそれもとぎれとぎれだ。個体数が減ってきたのだろうか

▼昆虫は環境の変化をもろに受ける。特に植生の変動は虫たちにとって絶滅を意味することもある。センダンの木がなくなったいまナビガースは拠り所を失ったのではないか

▼「シンダンギィヌナビガース」と言われるほどクマゼミはセンダンの木に群れていた。林であったところは住宅地となり、草木が繁茂し昆虫の楽園であった土地は切り開かれて畑となってしまった。畑は農薬で守られる。昆虫にとって住みにくい宮古島になっているのではないか。

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