プロ養成試験に合格/ボートレーサー
レースで稼ぎ宇宙へ/佐原さん「幼少期の夢」
「ボートレースで賞金を稼ぎ、宇宙に行く」-。宮古島市平良出身の佐原啓太さん(21)が、ボートレーサー養成所に入るための試験に合格した。20~30倍ともいわれる超難関をクリアし、10月から福岡県にある養成所で1年間の研修を受ける。養成所で学んだ生徒のレーサー資格取得率はほぼ100%で、プロの道は開けたようなもの。「この1年、養成所でトップの成績を残す」と意気込む。
幼少のころから夜空を見上げては星をじっくり観察する少年だった。中学生になると「宇宙に行く」ことが明確な目標になった。
その夢をかなえるため宇宙航空研究開発機構(JAXA)入りを目指した。高校は沖縄市の球陽へ、大学は東京理科大を選んだ。
だが、たとえJAXAに入れたとしても宇宙に行ける保証などない。それほど宇宙飛行士への道は険しいものだった。そんな葛藤を抱える中、ボートレースを見て夢中になった。レーサーの平均年収が1600万円、トップレーサーになると1億円の賞金を稼げることを知った。民間の宇宙事業が脚光を浴び、人類の宇宙旅行は現実味を帯びている。そこで決断した。「ボートレーサーになって宇宙に行くお金をためる」。
決めたら行動は速い。すぐ養成所試験に挑み、3度目の受験でついに合格。大学を中退し、退路を断った上での念願達成だった。
大学を辞めてまで夢を追う決断を下した佐原さんの両親は「本人が決めたことであればそれで良い」と迷いなく支持した。父の淳史さん(47)は、「決して後悔しない人生を歩んでほしいから」と背中を押し、近い将来、プロのレーサーとして活躍する啓太さんへの期待を募らせている。
ただ、養成所での生活は厳しい。スケジュールは分刻みで午前6時に起きて午後10時には就寝。研修では頭脳と体力を同時に鍛える傍ら、礼儀や態度、行動といった規律の徹底も求められる。携帯電話など通信機器の持ち込みも不可だ。睡眠と食事を取る以外の時間は朝から晩まで学び続ける研修を通し、プロのレーサーとしての基礎を築く。
そんな研修を前に佐原さんは、はやる気持ちを抑え切れないという。もともと勉強は好きだし、運動は学生のころから続けていて筋トレを日課にしている。そんな佐原さんにとって、頭脳と体力が資本となるボートレーサーはうってつけの職業ともいえ、「本当に楽しみなんです」と笑う。
目標が明確なだけに迷いは一切ない。「とにかく養成所ではトップの成績を残すだけ」と引き締め、「10年以内には1億円レーサーになる」と自信を見せた。
宮古島市初のボートレーサーの誕生に向けて、21歳の挑戦は続く。