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社会・全般
2020年1月24日(金)8:54

【私見公論】島に咲く「文学」の花/新田 由佳

 SNSの急速な発達によって、いまやパソコンやスマホさえあれば、誰でも気軽に自らの表現したいものをかたちにして、多くの人と共有できるようになった。ネット上では、日々数え切れないほどの動画などが新たに公開され続けている。

 人はみな、程度の差こそあれ、心の内にあるものを表現したいという欲求を元来持っている。そのため、こうした新たな手法が登場する以前から、自らの心の内にあるものをかたちにして表す手だてがあった。音楽、美術、工芸、写真など、その方法はさまざまだが、これらはどれも接する者に感動や驚きを与え、人の心を豊かにしてきた。文学もまた、そうした表現手段のひとつである。

 かつて、宮古に「文学」の種をまく人がいた。戦前・戦後を通じ新聞記者として活躍した平良好児は「文学の種まく人」を自負し、生涯を通じ詩歌、俳句、随筆、批評など、多彩な文芸活動をつづけた。カママ嶺公園には、彼の詠んだ「まかがよふ真砂の浜は寂寞と時の器をみたしつつあり」の歌碑が建立されている。

 平良がこの世を去った翌年、1997年に有志によりはじめられた文学賞「平良好児賞」は、のちに宮古毎日新聞社が引き継ぎ、2014年まで続いた。この賞の志を継ぐような形で、2017年に「宮古島文学賞」はスタートした。「平良好児賞」が宮古ゆかりの刊行物に贈られたのに対し、「宮古島文学賞」は、未発表の短編小説を全国から広く公募するものとなっている。

 「宮古島文学賞」の第1回は、全国各地はもとより海外からの応募もあり、229作品が寄せられた。小説家の椎名誠さん、児童文学作家のもりおみずきさん、文学紹介者の頭木弘樹さんの3名の選考委員による審査の結果、一席に神津キリカさんの「水靴(すいか)と少年」、二席に小池昌代さんの「匙(かひ)の島」が選ばれ、佳作は森田たもつさんの「蝉衣に吹く風」、玉元清さんの「笛吹川」、長野和夫さんの「笹舟」の3作品であった。第2回は60作品が集まった。この回から選考委員の頭木さんが小説家の大城貞俊さんに交代、一席に森田たもつさんの「みなさん先生」、佳作に佐鳥理(さとりさとり)さんの「紺碧(こんぺき)のサンクチュアリ」が選ばれた。地元宮古からの一席受賞に島じゅうが喜びに沸き立った。

 私は、第2回から「宮古島文学賞」に事務局の一員として携わっている。委員には当然ながら各作品の作者はもとより一切の周辺情報が伏せられ、作品の内容、完成度だけで選考がなされる。選考会では、数時間にわたり各候補作品についての議論が戦わされ、1次、2次、そして最終、と回を重ねるごとに白熱の度をましていく。選考の場は圧倒的な迫力と同時に、ひとつひとつの作品の細かい表現についての言及も多々あり、各委員が応募作品に対して敬意を払っていることが感じられ、胸が熱くなる。

 さて、第3回「宮古島文学賞」は現在、最終選考の最中で、2月6日の最終選考会を経て、翌7日には受賞作品が発表される。応募61作品の中から最終選考候補に残った8作品は、ファンタジーから社会派まで実に多彩である。

 一編の小説を書きあげるのに、どれだけの取材をし、どれだけの想像力を駆使したのだろう。そして何に突き動かされて筆を執りはじめたのだろう。書かずにいられない衝動に駆られた表現者たちの文学の種は、それぞれの花を咲かせてこの島にたどり着いた。

 これからも宮古に、「文学」のみならず文化、芸術の花が未来永劫(えいごう)咲き続けることを願って、私の「私見公論」を締めくくりたいと思う。これまで拙文をお読みいただき、また、応援の言葉も多数いただいた。ここに改めて感謝申し上げたい。
(宮古島市総合博物館学芸係・宮古島市文化協会事務局)


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