支援拡充へ認識共有/天野、多和田さんが講話
県がん条例講演会
県がん条例の制定にちなむ講演会(主催・ゆうかぎの会など)が2日、市働く女性の家「ゆいみなぁ」で開かれた。がんを経験したNPO法人グループ・ネクサス理事長の天野慎介さんと同理事の多和田奈津子さんが講演し、患者支援の拡充のためには、声を上げると同時に「自分たちの地域で何ができるかを考えることが大切」と話した。がんに対する社会の誤解や偏見をなくすことの重要性も指摘した。参加者は条例の充実に向けて認識を共有、決意を新たにした。
県のがん対策推進条例が制定されて満2年。これに伴って情報・相談支援会が充実したほか、図書館にはがん関連の図書コーナーが設置されるなど、各種情報に市民がアクセスしやすい環境が整った。
離島に住む患者の宿泊支援や市独自の渡航費助成もあり、患者への支援は目に見える形で表れている。
その一方で宿泊費の支援が放射線治療に限られるなど、「まだまだ十分とは言えない」として主催団体が今回の講演会を企画。患者支援の充実に向け、まずはがん条例を地域に浸透させることを目的に据えた。講演のタイトルは「安心して暮らせる支援を求めて」。
講演では、悪性リンパ腫患者・家族連絡会にも属している天野さんが、がん条例に関する全国と沖縄の取り組みなどを紹介しながら話を進めた。
沖縄での制定について天野さんは「ゼロから一歩は大きな前進だ」と条例制定を評価した。今後の患者支援拡充については「要請は必要だが、その一方で自分たちの地域で何ができるかを考えることが大事」などと指摘。「がんサロン」などの事例を紹介しながら独自の取り組みを促した。
また、社会復帰を支援する国立がん研究センターのがんサバイバーシップ支援研究部を紹介し、「安心して暮らせる社会を目指すための組織」と述べ、がんに対する社会の偏見をなくすことの重要性を訴えた。
この後、多和田さんが若年がんの体験を中心に講演を行った。がんで揺れ動いた自身の気持ちを赤裸々に語りながらも「大切なものの順番が明確になった」という意識の変化も紹介して支援の大切さを語った。
講演会に参加した市民は2人の話を聞いてがん条例の充実を決意、患者支援の拡充を誓い合った。
冒頭、ゆうかぎの会の真栄里隆代代表は「この条例を絵に描いた餅にしないためにはどうすれば良いのかを考えたい。みんなが関心を持ってがん条例を大事に育てることが重要。情報を共有し、必要な声を出していきたい」と述べた。