日常生活に宮古フツを/シマdeシンポジウム
方言の「継承」が大切/3氏が事例元に意見・提言
地域の伝統文化を考える第1回「シマdeシンポジウム」(主催・県、県文化協会)が30日、城辺公民館で開かれた。宮古島市史編纂委員会委員長の下地和宏さんをはじめ、宮古語(宮古フツ)を次世代へつなぐために奮闘しているアーティストや学校教諭が継承をテーマに提言。それぞれ宮古フツを日常化する社会環境の大切さを訴えた。クイチャーも探求し、島に脈々と根付く伝統文化の重みを参加者全員で共有した。
このシンポジウムは、県内の各地域で受け継がれてきた伝統芸能という文化資源に光を当て、これを内外に発信して地域の活性化を図ることが狙い。市の教育委員会が共催した。
シンポジウムでは、下地さんがコーディネーターを務めた。はじめに「宮古の言葉は方言ではなく、言語として認められていることを理解してほしい」と参加者に促した。その上で宮古語が消滅危機言語に指定されているとし、「今後どのように継承していくかが課題だ」と述べた。
パネリストの一人でアイランダー・アーティストの下地暁さんは、クイチャーフェスティバルを立ち上げた経緯を語った。「エイサーの波が宮古に押し寄せてきた時、クイチャーが追いやられているような気がして寂しかった」と話し、このときの気持ちがイベントを立ち上げる原動力になったと振り返った。
成功を収めたイベントだが、課題として世代交代を挙げた。「今の若い人がたとえクイチャーを踊れたとしても、唄えないと意味がない。継承しているとは言えないと思う。唄って踊ることで躍動感は出る」と指摘し、伝統文化を守り育てる環境の整備を訴えた。
学校教諭の謝敷勝美さんは方言を取り入れた授業を紹介した。この中で「子供たちは方言を聞けてもほとんど話せない」という実態を報告。さらに「みんなニガウリのことをゴーヤーという。それが宮古の方言だと思っている」と話し、若年層の間で宮古方言が失われつつある現状を嘆いた。
その上で謝敷さんは「宮古フツをどのように生徒に伝えていくのかが課題」と強調。「今は方言を使うことが難しい」と話し、日常生活をはじめとする地域社会の中で、宮古方言が当たり前のように使われる環境の重要性を説いた。
これらの提言を下地さんが総括。「基本的には非日常化している宮古フツを日常化すること。宮古の言語が生き残っていくために必要なことだ」と述べた。
この日のイベントではシンポジウムのほか、友利郷土芸能保存会が伝統の友利クイチャーを披露。パネリストと会場の市民との意見交換も行われた。