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社会・全般
2020年4月7日(火)8:54

【行雲流水】(月と不死)

 宮古島市の漲水御嶽の近くに「ネフスキー通り」と呼ばれる長さ90㍍の石畳の坂道があり、その終点近くに、「宮古研究の先駆者ニコライ・ネフスキーの碑」がある

▼ネフスキーはペテルブルグ大学を卒業後日本に留学、日本語を学び、1920年代に、日本の有名な言語学者である金田一京助や柳田国男、折口信夫、伊波普猷などと知り合い研究を開始する。まず、東北地方に伝わる民間信仰のひとつ「オシラ様」を研究、その発想の新しさ、鋭さで、研究者たちを驚かせる

▼また、まだ誰も研究を始めていなかった宮古島の研究を、宮古の各地を3度も訪れて、方言の収集と民俗学的研究を進めた。その研究論文のひとつに、宮古では虹のことを天の蛇ということを取り上げ、世界的な広がりの中で論考している。先日、琉球朝日放送で「宮古島に虹をかけたロシア人ニコライ・ネフスキー」が放送された

▼作品『月と不死』では、月(天帝)が、人間に命の水「若水」を蛇には「死水」を浴びせるよう命じたが、使者が油断している隙に蛇が若水を浴び、人間は死水を浴びるはめになる。そのため蛇は脱皮して若返り、人間は死すべきものとなった

▼研究の様子はロシアから贈られてきた『宮古方言ノート』がほうふつさせる。例えば、「kami=亀。伊良部島ニテハ海上ニ亀ニ救助セラレシ人アリ、其ノ子孫ハ報恩ノ為ニ亀ノ肉ヲ食セズ」

▼彼の研究で大佛次郎賞を受賞した加藤九祚は書く。「ネフスキーはその学問において、日ソ両国の人々の思い出の中で生き続けている」(空)


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