「色の世界」を歩く/仲地 清成
2013.3.28ペン遊ペン楽
青い空に白い雲。大空にかかる七色の虹。みどりの野山。咲き乱れる赤、白、黄の花々。小鳥もそれぞれの色をまとっている。自然は「色」に彩られていて美しい。
太陽光をプリズムに通すと、七色の光に分かれる。その光の波長の違いを、ヒトは色の違いとして知覚する。
黄色の物は黄色の光を反射して残りを吸収する。白はすべてを反射し、黒はすべてを吸収する。
白はすべての色を含みながら、惜しげもなくすべてを外へ反射するから、大らかさや開放感、明るさや清らかさを感じさせる。黒はすべてを吸収するから、恐怖を、一方で、威厳を感じさせる。だから、ウエディングドレスは白で、喪服は黒となる。
緑は自然界にこんなにあふれているのに、どんな木や草を使っても緑色の草木染めはできないという。木々の緑は生きていることと深く関わって存在するのだろう。
緑の葉緑体は、太陽からのエネルギーを有機物に変えて生物の生存を支えている。
かくして、みどりがイメージさせるのは自然やいのち、若さや希望である。
青の光は大気層でよく散乱される波長の光であるので空は、また海も青くて広い。
白鳥はかなしからずや空の青
海のあおにも染まずただよふ(若山牧水)
青と白の対比で、青い海の上に漂う孤高な白鳥を際立たせている。
赤は燃える生命、情熱の象徴だ。
光の波長によって水滴に対する屈折率が違うので、赤から紫までの光のスペクトルが並んだ円弧状の虹ができる。
古来宮古では虹を「天の蛇」と呼ぶ。蛇は脱皮を繰り返す故の不老不死の象徴である。キリスト教では、神が人間に与えた約束のしるしである。
虹の赤い部分よりも波長の長い赤外線の部分をヒトは感知できないが、ある種の昆虫はできる。たとえ、彼らがすごい色彩の世界を見ているとしても、われわれはそれを思い描くことができない。自然の奥深さに驚くだけである。
しかし、虹よりも美しく彩色された天国や黒色よりも黒い地獄を想像することも人間にはできる。
色に触発されて、人は創造の世界を広げる。
光の干渉で、水面上の油の薄幕やシャボン玉が色づいて見える。
シャボン玉
コクトー
シャボン玉の中へ庭 は這入れません
周囲をくるくる廻っ ています
光がものに色彩を与える。したがって光が変化すると色も変わる。印象派の画家たちは、光によって刻々に変化する束の間の印象をカンバスの上で表現した。
科学者たちは、遠い銀河からの光ほど波長が長く「赤方偏移」していることを突き止め、膨張宇宙論を確立した。
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である
(谷川俊太郎)
色よ、光よ、称えられてあれ。
(宮古ペンクラブ会員)