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社会・全般
2011年2月2日(水)10:30

「命の尊さ」(行雲流水)

 開高健は戦争のもたらした飢餓体験を原風景として執拗に抱え込んでいる作家だが、高度成長に酔いしれる文学者たちのあり方に疑問を呈したことがある


▼確かにわが国は、経済成長を経て、「飽食」時代と言われるようになったが、国民の多くは、戦後食料を得るのに苦労した体験や他国から受けた救援への思いを忘れかけている

▼しかし、途上国では今なお、多くの人々が飢えに苦しんでいる。各国の支援はあるものの、必要なところにはなかなか届かないのが実情である。したがって、NPO等の現地における救援活動が重要な意味を持つ

▼先日、宮古島市と宮古地区人権啓発活動地域ネットワーク協議会の主催で、JAN(日本アジアネットワーク)代表者でNPO法人アジアチャイルドサポート代表理事の池間哲郎氏の講演会が催された。講演では、途上国で貧しさのために一日に4万人が飢餓のために亡くなっている現実や、極限の環境でも子どもたちが懸命に生きていること、子どもたちの他者への思いやりの深さを具体的な事例で紹介した

▼氏は途上国支援に参加すると共に「国際協力を通して日本の青少年の健全育成」を基本理念に掲げ、およそ1000校で講演を行ってきた。訴えていることは三つ。一つに「知ること」、「理解すること」。二つめに「少しだけ分けること」。三つめは「自分自身が一生懸命生きること」

▼本当に大切なものを見失ってきたことの大きさを自覚させ、「命の尊さ」と「生きる意味」を考えさせる講演であった。


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