下地昌明村長新春インタビュー
と畜場建設めど付けの年
旧空港の再利用に意欲
-昨年を振り返っての感想は
これまで取り組んできたことが徐々にではあるが村民の間に浸透してきたと思う。
例えば福祉面では、年1度の健康診断に多くの村民が受診し健康管理に努めている。緊急搬送も以前に比べ減少した。
教育面では学校の教室の耐震構造を図った。より良い環境の中で授業を行ってもらおうという思いで教育の整備をした。学力テストの成績も県平均に達していることは喜ばしいこと。
農業面では、農業立村を掲げる村にとっては厳しい年となった。昨年5月の台風で葉タバコが壊滅的な打撃を受けた。サトウキビは夏の少雨傾向で生育に悪い影響を与えた。
畜産は、生産農家の努力はあったが、大震災の影響で購買者の買い控え傾向があり価格が低迷した。
キビや畜産はTPP(環太平洋連携協定)問題も抱えており、先行き不安定な状況だ。TPPに関しては現在、村としての具体的な施策は示せないが、農家が安心して生産に励んでいける取り組みを推進していく。
島内の経済を潤す公共工事は、田園空間博物館事業が国の仕分け作業で廃止されたが、村づくり交付金事業を充て、村にどうしても必要な事業は進めてきた。
土地改良整備は全体の6割に満たない状況だが、徐々に整備率は高くなっている。
旧空港の整備については県の理解を得て、昨年末から再利用に向け、滑走路のアスファルトのはぎ取りや県有地の払い下げに向けての話し合いを済ませた。
-新年度に重点的に取り組む事業は
まず、旧空港の開発だ。一部は太陽光パネルを設置してあるが、周辺整備や滑走路のアスファルトの除去を進める。これが進展すれば、採草地やヤギの放牧地として利用したい。
ピンダアース大会の場所を夢パティオたらまの隣に移し、観光客をもっと呼び込もうと図面を引いてもらっている。
さらにはヤギ、豚を対象とする簡易と畜場の建設に向け取り組んでいる。今年は、と畜場の建設に向けてのめど付けの年にしたい。
こういった事業を多良間ピンダによる島おこしに結び付けて村の畜産振興の弾みにしたい。
姉妹関係の岩手県宮古市との交流は年になる。昨年、大震災に見舞われたにも関わらず8人の村の子どもを受け入れてくれた。
今年1月には宮古市から交流団がやってくる。温かく迎えたい。早期の復旧復興に向け、私たちに何かできることがあれば積極的にお手伝いしていきたい。
多良間・石垣間の航空路の復活については昨年、下地幹郎衆院議員に要請した。今年も実現に向けての要請活動を展開する。
農産物の出荷だけでなく、それを加工し販売していく体系づくりをしていく。若者たちが農業の魅力を認識すれば、雇用創出につながると思う。
ただ、若い人が島に戻ってくるとパートナーが必要になってくる。そういった嫁不足をどう解消していくか、打開策を模索していきたい。
私たちは日本で最も美しい村連合に加盟し、県立自然公園の指定を受けている。自然豊かな村づくりを通して、島の良さを発信しながら観光につなげる取り組みをしている。今年はさらに観光振興を図っていきたい。
東日本大震災の津波を見て、高台が無い島の防災について真剣に取り組んでいく必要がある。昨年5月に、宮古市を訪問して、防災についてつくづく感じた。
明和の大津波でも実際に被害があった。島の防災という観点から島で一番の高台を整備し、村民が一時避難できる施設建設を検討している。
来年は村政100周年を迎える。その大きな節目に安心安全な島づくりに向け「津波避難タワー」の整備が必要と考えている。
-新しい年に向けて村民にメッセージを
新年を迎えてみんなが願うことは、昨年より良い年にしたいということ。そういった気持ちを受け止め、村民と共に良い島づくりを進めていきたい。
そのためには、福祉行政を充実させ高齢者を積極的にサポートしていく。未来を担う子どもたちには、島外に目を向けながら将来に向けての設計をしてもらいたい。
岩手県宮古市とは長い交流の中で信頼関係が構築されている。双方の子どもたちとの交流はもちろんだが、職員間との交流も進めていければと思っている。