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【特集】2023 新年号
2023年1月1日(日)0:11

方言起点に学び広げる

文化、伝統、作物の継承図る/宮総実ボランティア部

「方言」調査を軸に学びを進め、郷土文化、伝統の継承に向けて研究者たちとオンラインで会議を重ねるボランティア部の皆さん

2009年にユネスコが発表した日本で消滅の危機にある言語に「みゃーくふつ(宮古口、宮古語)が含まれた。そうした背景を踏まえて宮古総合実業高校のボランティア部では、これまで方言について調査する活動を展開してきた。高齢者との会話の中には先人の知恵が多く含まれ、その中から生徒たちは新しい学びにつなげて郷土の文化を継承していく活動を展開している。

昨年10月に行われた同校と下地小学校の交流会で、同部が以前に制作した手作り紙芝居「来間の人々を助けた三兄弟~神様が怒ったぞぉ~」が同小学校に寄贈された。

この紙芝居は、同校のボランティア部が島の人たちと「みゃーくふつ」を通した交流を重ねる中で、島に伝わる民話を継承しようと取り組み、14年~19年の6年間、来間島の伝統文化「ヤーマス御願」について調べて完成させた。

この取り組みは、宮古島諸方言記録活動を行っている神戸大学人文学研究科助教の林由華さんらとの関わりから生まれた。

今でも、林さんとはオンラインでやり取りを継続しており、宮古方言の継承に向けて生徒たちの活動は先輩から後輩へと受け継がれている。

方言調査について林さんに聞くと、私たち研究者が地元の高齢者に標準語で話しかけると、高齢者も自然と標準語で返してしまうという。

しかし、事前に地元の高校生と一緒に日常会話をさせると方言で話すようになり、研究にもいい効果を及ぼしているようだ。

林さんは「方言は地域にとって『財産』。その地域の生まれ育ったものを持ち続けることは地域自体を理解することなる。ぜひ、大切にしてほしい」と呼び掛ける。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

さらに、同部は方言を通した会話集作成の中で、生活福祉科の活動に関わりのあるテーマとして「在来種の豆」についても研究を進めてきている。

現在は、東京農業大学大学院農学研究科の玉木陸斗さんの助言を仰ぎながら生徒たちは、今ではほとんど島で生産しなくなった在来の穀物をなんとか復活させようと、取り組んでいる。

これまでには、お年寄りたちの聞き取り調査をしながらアワ、モチキビ、麦など在来種の栽培に取り組んできた。

現在は、以前に城辺でも生産されていた陸稲(りくとう/おかぼ)の栽培に取り組んでいるが、ハトやスズメなどの被害を受けてなかなか成功に至っていないという。

ボランティア部の菅原象一部長は「私は本土の生まれだが、島で方言を学びながら、自分たちが育てた穀物を収穫して、それを神酒したりする経験はとても貴重だと思う」と話した。

生徒たちは、定期的に来島する大学の研究者たちと一緒に自分たちの「財産」を継承しながら、それを通して、学びの幅を広げている。

▽3年=菅原象一、下地弘樹 ▽2年=伊計風音、川満藍華、下地理陽 ▽1年=吉田希▽顧問=平良舟江(教諭)

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