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行雲流水
2018年5月8日(火)8:54

【行雲流水】(阿Q正伝)

 1902年、魯迅(ろじん)は中国から日本に留学、医学を学んだ。しかし、彼は学校を突然退学する。授業中の日露戦争のスライド映像で、中国人がロシア軍に協力したとして、見せしめに日本軍に処刑されているところや、それを無表情で、傍観者的に見ている中国の群衆に衝撃を受ける。彼は、そのようになってしまった中国人の精神構造を考え、文芸の力で民衆を覚醒させたいと思う

▼こうして書かれた小説のひとつが『阿Q正伝』である。その主人公阿Qは怠け者でうぬぼれや、博打(ばくち)好きである。けんかには弱く、負けても理由をつくろって自分を慰め、自分は大人物だと思いこんで、人を見下す。無知の故に騒ぎに便乗した結果、無実の罪で処刑される。それを民衆は面白がった

▼阿Qも傍観的な民衆も列強によって半植民地にされた中国のなかの人々の象徴である。魯迅はそこに、自主的行動をもたず、支配者への服従を第一とする奴隷根性をみた。事大主義がはびこっていた

▼そこで、魯迅は現状を痛烈に批判することで、人々の精神的自立を啓発することにつとめる。福沢諭吉が言う「一身独立して一国独立する」と同じ考えである

▼魯迅は、一人一人の覚醒で愛する祖国の正常化が図れると信じ、期待を抱いた。彼が残した有名な言葉がある。「地上に道は初めからあるのではない。多くの人が歩くからそれが道になる」

▼個人の自律と社会の自立、国の真の独立は、いつの時代、どこの国でも、普遍的に問われていることである。(空)

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