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私見公論
2019年10月11日(金)8:54

【私見公論】「宮古島バブルと働き方改革」/小池 雅弘

 宮古島に赴任して早くも3カ月。最近ようやく少し余裕が出て、宮古島内のいろいろなところに出かけることが多くなった。そこでまず目に飛び込んでくるのが、やっぱりアパート、リゾートホテルなどの民間建築工事がとても多い。それだけではなく、市総合庁舎建設工事をはじめとした公共工事も盛んである。それでなくても今は職人不足と言われているのに、これだけの建設現場がこの小さな宮古島に集中していると、当然のことながら地元だけではとても確保できず、沖縄本島からはもちろんのこと、本土からも大勢の職人や技術者たちが宮古島にやってきている。

 建設業界以外にも、クルーズ船をはじめとした観光客増に伴い宿泊、飲食、レンタカー、ショッピングセンター等観光関連業界もオーバーツーリズムと言われるほど活況である。ホテルやレンタカーの予約が取れないとか、クルーズ船寄港時にはタクシーがなかなか来ないとかという経験を自分も味わった。

 宮古地区の求人倍率は県内の中でも高い状態が続いている。沖縄県最低賃金は令和元年10月3日より、時間額790円となったところであるが、仕事柄この改正された沖縄県最低賃金を周知すべく、10月3日から時間額790円となること、沖縄県内の使用者はこの最低賃金より低い賃金で労働者を使用することはできないことを宮古管内の団体や事業主に説明したところ、「署長、この金額で求人を出しても誰も応募しませんよ」とあちらこちらで言われてしまった。「時給1000円は出さないと人は集まりませんよ」とまでおっしゃる人もいた。すべての事業所が同じ状況ではないとは思うのだが。ちなみに時給1000円となると、今年改正された全国で一番高い最低賃金である東京都最低賃金(1013円)に届きそうな金額である。それにしても、自分自身県外や沖縄本島で長いこと労働行政で勤務してきたが、今までにこういう経験を味わったことがない。4月6日付の本紙に、宮古島市の臨時職員の応募が少なく、欠員が78人もあるとの記事があり、欠員の要因の一つが賃金であり、宮古管内の求人倍率が高く、比較的高い民間の求人に応募が流れていることなどが載っていた。

 こういった状況も含めて、まさにこれが「宮古島バブル」というものなのかと、宮古島に住んでみて、実感しているところである。

 宮古管内は労働災害も増加している。昨年(平成30年)の休業4日以上の労働災害は過去最多に並ぶ52件であったが、今年は9月末現在(速報値)で32件、昨年同時期の30件を上回っている。特に建設業が多い。建設業の労働災害は過去20年の間では年間で10件を超えることはなかった。ところが昨年は18件で、その前年の平成29年(6件)から3倍に増えた。今年も既に10件(9月末速報値)発生し、これから年末にかけて例年労働災害が増える傾向にあることから非常に憂慮される。労働災害は人手不足だからとか忙しい、慣れていないとかいって発生させて良いものではない。労働災害が発生すると、本人はもちろんのこと、会社も家族にとっても痛手であり、大きな損失を伴う。

 前述したが宮古はいま「バブル」で建設、観光業界を中心に人手不足である。人手不足ということは、そこで働いている労働者の労働時間が長くなる傾向にある。労働時間が長くなると、疲労がたまったり、寝不足に陥ったり、集中力も落ちるなど、労働効率も悪くなる。結局労働災害の要因となる。

 政府はいま、働き方改革を推し進めている。働き方改革関連法が本年4月1日から順次施行され、労働基準行政でも、時間外労働の上限規制の導入や年次有給休暇の確実な取得が必要となるなどの労働基準法改正などが施行された。各企業の皆さんには、これを機会に働き方改革を進めていただきたい。長時間労働をなくし、休暇等でしっかり休み、メリハリをつけた働き方などにより、そこで働く労働者がずっと働きたいと感じるような魅力ある企業にしていただきたい。(宮古労働基準監督署長)

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