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2010年10月1日(金) 23:56

ナショナリズム(行雲流水)

 民族、領土、宗教に根ざす小さな火種は、大火事になりがちだ。「正義」の旗が立てやすいからだ。だが後でよくよく調べてみると、ほんとは国内の内輪もめが原因だったりする。選挙や権力維持や予算獲得競争など国内事情が絡んでいる場合が多い


▼「ナショナリズム」は揮発性の高い燃料にも似て、ちょっとした摩擦で火がつき、燃え上がる特質がある。時には、炎が逆流して自国政府へ向かう。時の政府は対外強硬策を次々と打ち出して、火の勢いを外へ向けようとする▼尖閣諸島をめぐる中国政府の姿勢は、理不尽と思えるほど強硬だ。その背景には、経済大国としての自信とは裏腹に、深刻な国内事情があるようにみえる。都市と農漁村の生活格差拡大、都市部における貧富の階層分化、一党独裁の統治機構の揺らぎなどだ。国民の不満のはけ口を外へ仕向けることは歴史上よくある話だ▼日本でも、昭和16年の日米開戦に至る10年間がそうだった。満州事変、国際連盟脱退、近衛声明(「蒋介石を相手とせず」)、日独伊三国同盟などに世論は拍手喝さいし、憂さ晴らしをした。「ジリ貧を恐れてドカ貧になることなかれ」(米内光政)との慎重派もいたが、対外強硬派が主流を占めた▼冷静な目を持つべきは国民かもしれない。もちろん政府の不手際はたださなければならないが、議論すべきは具体的な再発防止策だ。たとえば国際司法裁判所の活用、安全保障条約や日中漁業協定の枠組みの見直しなどだ▼「外交にラスト・ワードはない」(ルーズベルト)との言葉もある。