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2011年10月12日(水) 22:50

嘆きの国 嘆きの島 希望な忘れそ/清水 早子

2011.10.13 ペン遊ペン楽


 放射能来ぬと目にはさやかに見えねども 耳なき子兎にぞおどろかれぬる
 こんな風に平安時代の古今和歌集から拝借して捩ってみたが、3・11以降、私たちの現実と未来はとても深刻だ。唯一の原爆の被爆国が再び自らの手で国民を被ばくさせるという地球上最も異常な国となったこの国。You Tubeで映像が流れ話題になった「耳のない子兎」は、実際に放射能の影響なのかどうかはわからない。しかし、地球がかつて経験したことのない量の放射能が福島原発から流出しており、その影響はゆっくりとしか見えてこない。「耳なき子兎」は、1億余人が体内に抱えた耳鳴りのような不安を表している。



 そしてこの歴史的な人災は、福島原発の水素爆発は、この国の支配の構造を隠し覆っていた「建屋」をも吹っ飛ばした。ちまたの私たちにも「電力会社の利益の独占」と「それに群がる官僚、財界、政治家、学者、マスコミ」の既得権益集団のつながりの構造が見えやすくなった。


 原発を作って電力を作れば作るほど儲かる仕組みを作った彼らは、莫大な金をばらまき、子どもたちには公教育の場で、教材として副読本を与え、「原発はクリーンなエネルギー、安全な発電」と洗脳してきた。戦時中、日本軍がアジアの侵略地や琉球で強要した「皇民化」教育のように。


 事故直後、現場から逃げ出そうとした東京電力は、メルトダウン(核燃料溶融)の事実を隠し、今なお情報を「マーカーで真っ黒に塗りつぶして」しか出さない。この国の政府は、チェルノブイリ事故時の基準に沿えば避難すべき地域を「大丈夫だ」と言い、国民の生命よりも膨大な賠償のリスクの方を重視する。社会の「建屋」を吹っ飛ばされて、ウソが分かりやすくなったこの国。悲しいかな、私たちの不安は不信と表裏一体である。


 人類の手に負えない「核」、その放射能が半減するのに何万年もかかる核廃棄物を処理するすべは世界中にみつかっていない。それなのに、この地震の多い、狭い国土に54基もの原発が面積比にすると世界一の密度であり、まだ、政府はやめようとしていない。


 共に国策の犠牲になっているフクシマとオキナワが語られ始めている。県民の4人に1人が亡くなったという沖縄戦はもとより、「核も基地もないオキナワ」ではなかった本土復帰。米軍の世界戦略と軍需産業のお先棒を担がされた日本の防衛政策。戦後もつづく本土の「捨石」としての基地のオキナワ。さらに今、軍事基地は宮古・石垣・与那国へと拡大されようとしている。


 「核の平和利用」と言われた原発のウソは、自衛隊は「平和をつくるお仕事」のウソと通底している。自衛隊は次世代戦闘機を各国から見積もりを出させて年内にも決定しようとしている。1機50億円もするものを40機も。戦闘機では災害救助も復興もできないのに。


 では、沖縄島の離島、秋風吹くこの島には漂っていないか、ウソの臭いは?


 海中のサンゴを壊して造った海中公園。小さな大神島の地域の財産である学校を残さず、文化的な価値ある図書館の建物を市民の1万超の保存要請の署名にもかかわらずさっさと取り壊したエコアイランド。「子どものため」にと言いながら、地域の柱を強引に失くそうとする学校統廃合。


 17年前、この島暮らしを始めたとき感じたあの光る風は失われたのだろうか。


 東風吹かば思いおこせよ この島に見出さむとした希望な忘れそ


 (菅原道真さんへ著作権侵害を陳謝しつつ)(宮古ペンクラブ会員・自由自在空間久松館)