2011年11月2日(水) 9:00

田場安壽さん、黄綬受章

砧打ちで上布継承に尽力/「指導した父に感謝」


秋の褒章を受章し笑顔で喜びを表現する田場安壽さん=平良下里の自宅で

秋の褒章を受章し笑顔で喜びを表現する田場安壽さん=平良下里の自宅で

 政府は2日付で2011年秋の褒章受章者を発表した。県内では10人が受章し、宮古関係では宮古上布製作工程の砧打ちに関わり、上布の継承、発展に尽力してきた染織製作技術者、田場安壽さん(86)が黄綬褒章を受章した。褒章は、長年その道一筋に尽くしてきた人に贈られる。田場さんは「少しずつ実感が湧いてきているが、今でも信じられない。砧打ちを教えてくれた親父に感謝したい」と話した。



 宮古上布の洗濯業は家業だった。田場さんは10代のころから父・安慶さんの指導を受けながら砧打ちの技術を学び続けたという。少年にはまだ重い砧を持ち上げ、貴重な布のしわを伸ばし、艶を出す作業に精を出した。


 「打つほどに美しい艶が出るのが宮古上布。ただ何万回も打つ作業だからきつい仕事だね」と苦笑いを浮かべながら当時を思い返す。


 戦争を経験した後、1949年から宮古水産高校実習指導員助手として働き始めた。以後、働きながら家業の砧打ちにも従事するという生活を長く続けた。


 その後退職し、砧打ちでも一線を退いていたが歳を過ぎたころに市の職員から「砧打ちの指導者になってほしい」と頼まれた。当初は高齢を理由に丁重に断った。それでも諦めない市の職員のこんな一言が指導者になる決意を固めさせた。
 「このままでは宮古上布が衰えていく」


 以来、若手の指導に当たりながら、それまで構築されていなかった洗濯業、砧打ちのマニュアルの作成に取り掛かる。このマニュアルは今に受け継がれ、今日の宮古上布の発展を支えている。


 「いつまでも残していかなければならない上布だから」と感情を込めて語る。「叩くことで艶が出る。魅力だよ。今思えば親父から習っていて本当に良かった」と感慨深げに振り返った。


 宮古上布の伝承者にはいつもこう言って励ますという。「君たちがいるから宮古上布がある。君らがいるから上布が栄えるんだ。それを誇りにしてほしい。自分で誇っていいし誇るべきだ」


 宮古上布をこよなく愛する田場さん。父の指導は厳しかったが、今では最も感謝を寄せる存在になった。


 褒章は「最初は嘘かと思って信じるまでに時間がかかった。受章は親父のおかげ。一番に感謝したい人」と喜びをかみしめた。


 田場 安壽(たば・やすひさ)1924(大正13)年11月25日生まれ。10代のころから砧打ちに関わる。43年県立水産学校卒、終戦後49年から宮古水産高校実習指導員助手。以後学校勤務を続けながら砧打ちに従事。99年から宮古上布保持団体会員。2003年全国重要無形文化財保持団体協議会功労者表彰、09年文化庁長官表彰。