2013年2月8日(金) 23:08

「宮古上布」(行雲流水)

 「上布は上質の麻の織物」澤地久枝の著書『琉球布紀行』の中の宮古上布についての書き出しである。沖縄本島北部から与那国まで足を運んで琉球の織物とその作者についてまとめ上げた中の一節である



▼「蛍よ蛍 苧を績め 苧を績め」の表題の文章は奥深く示唆豊かである。著者は、宮古で工房を構える砂川恵美子、新里玲子、苧麻づくりの荷川取ハツに取材し、上布と上布を作る人着る人のつながりを敬愛を込めてつづっている


▼2月2日から3日の2日間、宮古島市、市教育委員会、宮古上布保持団体・宮古苧麻積み保存会・宮古織物研究会の主催する宮古上布展示会とシンポジウムが開催された


▼シンポジウムではデザイナー(講演者の肩書がないので紹介文から推測した)の藤原大さんの基調講演を拝聴した。講演の内容は、生身の人の手わざである上布との関連性を考えるにはいささか難しいものであったが、それなりの意義があり主催者の意に沿うものであったのであろう


▼澤地久枝は著書の最終章で「逢えなかった人」県立芸大教授大城志津子をたたえてその早世を惜しみながら、大城志津子の愛弟子である上布作家としての砂川恵美子に思いをにじませる。砂川恵美子は宮古上布の大御所であった下地恵康に師事したこと、新里玲子も下地恵康に学んでいることも記述している


▼文庫版あとがきを締める言葉として澤地はこう結んでいる。「伝統に縛られて創造性を失うのではなく、伝統をひきつぎ新しい染織の世界を開いてほしい。活路を開いて生きのびなければ、心血を注いで琉球の布を守った先人たちにあいすまないことになろう」と。