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2013年6月10日(月) 22:30

「おりおりの思い」(行雲流水)

 すべての個人にとって、自身の人生はかけがえのないものである。その人生の歩みを記録にとどめることは、生きた証しとしても重要である。自分史や文芸作品集、投稿文集等に人が関心を寄せているのはそのためである



▼記録を通じて、家族や親しい人たちとのつながりが深まることもあるし、断絶しがちな世代間の意志の疎通を図ることもできる。特に激変する社会や時代にあっては、歴史を証言するものとしても貴重である


▼このたび、下地康夫氏が80歳(傘寿)を記念して、『おりおりの思い』を出版した。氏は台湾で出生、幼少期を過ごしており、終戦時の台湾社会の変化を記憶している。宮古に引き揚げてきたのは多感な12歳。「真理」と「民主主義」に基づく新しい教育の洗礼を受ける。中学で受けた島尻勝太郎のロマンに満ちた「宮古の歴史」の授業の影響が、後に社会科の教師として、郷土史研究会員として、平良市史編さん委員として活躍したことにつながっている


▼「平和で民主的な文化国家」を築くことが、日本国憲法がうたい挙げる戦後日本の理想である。その視点に立って、今日的な問題に対して、豊富な文献・資料を駆使して論考された数点の投稿文が収録されている。それは氏が尽力した平和運動や復帰運動と表裏一体をなすものである


▼与那覇勢頭豊見親を元祖とする系図に関する記述と、「家族写真」は一家にとっての宝物となろう


▼心に残るという言葉のひとつに「和而不同」(和して同ぜず)が挙げられている。氏の生きざまそのものである。(空)