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2014年2月27日(木) 8:55

春の宴/本永 清

2014.2.27 ペン遊ペン楽


 2月15日、土曜日の朝。久しぶりに雲間から顔を出した太陽が、窓から幾条もの暖かい日差しを、赤茶けた畳の上に投げかけている。


 玄関の戸を開けて、庭へ出てみる。猫の額ほどの広さ、という勿れ。片隅に、南アフリカ原産のメイフラワーが一株、円錐花序の花を咲かせて、日の光に輝いている。


 純白と薄紫を織り交ぜたような色彩の、気品溢れる花。沖縄の地まで、遠く旅してきたものだ。妻が去年、花屋から買い求めてきて庭先に飾ったあと、鉢から取り出して土中に挿して置いたのだ。それがいつの間にか、根づいて育ったのである。


 しばらく、花を眺めていた。可憐というか、清楚というか。へぼな俳句を詠んで、讃えるのもいいなあ。五・七・五と手の指を内側に折り始める。


 われ先に春の宴の乙女かな


 あれ? 一瞬、目を瞠った。一つの細い花軸に無数の花がついているが、その花のまとまりが幾つか、しきりに揺れ動いている。風のせいにしては妙だ。花に顔を近づけて、注視する。正体はすぐにわかった。蜜蜂である。全身が小麦色、腹に黒い横じま。その生き物は、小さな花にやさしく接吻すると、蜜を吸っては、すぐに他の花へ飛び移る。その度に、花軸についた無数の花が上下左右に、ゆらゆらと動く。数えると花の周りに蜜蜂が3匹、飛んでいた。


 蜜蜂は、その透明な羽を激しく震わせて、花と花の間を忙しく動き回っている。3匹とも、花の蜜を吸うのに夢中で、他の仲間など我関せずの態。しかし、そこは狭い空間、時には2匹がぶつかり合いそうになる。それは心得ているのか、相互に接近するとさっと離れて、一定の距離を保ちながら、それぞれが花に密着して蜜を吸い続ける。


 ごうごうと蜜蜂乞ひを競ひけり


 風が吹いた。その途端、雲の影が覆いかぶさるようにして、メイフラワーの花を丸ごと包んでしまった。蜜蜂は、周りの急激な変化に驚いたのだろう、3匹そろって、慌ててぶーんと花から飛び立つ。そして、空高く上昇するとそのまま、姿が見えなくなった。たぶん、新たな好みの花を求めて、他所へ移ったのだろう。蜜蜂もその生は、花から花へ、これ旅の連続である。


 幸ひを求めてブッセの春の旅


 3匹の蜜蜂への思いを捨て、足元のメイフラワーの花へ、また目を移す。雲間が大きく開く。再び照り出した日の光を浴びて、花どもはそれぞれ、泰然とその美を競って、初春を飾る。こうしてわが庭も、春の訪れと共に賑わい始めた。明日は私の誕生日。妻から誕生日のプレゼントが欲しい。


 *ブッセとはドイツ新ロマン派の詩人、カール・ブッセのこと。日本では、上田敏訳「山のあなた」の作者として有名。
 (宮古の自然と文化 を考える会)

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