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私見公論
2014年6月20日(金)8:55

人権について考える/仲里宏美

私見公論99

 「ここを読んで」 
 わが家の朝は、夫が中2の息子に新聞を手渡し、読む箇所を指示する。息子は、声を出して読み始める。読み終わると、「何が書いてあったか」「どう思うか」と質問され、感じたことを言い合う。読むのは主に新聞のコラムなどで、夫が子どもに読んでほしい記事がほとんどだ。これは、子どもがある程度字が読めるようになる頃から続いている習慣である。小学2・3年生の頃は、素直に親の言うことをきく年齢で、漢字や文章に興味を持つ時期でもある。難しい漢字や文章もあるが助け舟を出して進めていく。

 この頃は、息子の方から尋ねてくることもある。先日は、息子がある歌手の歌の一部分「戦争を無くすため何回だって行う戦争…」を聴いてどう思うかと尋ねてきた。息子に「どう思うの」と問い返すと、「戦争で戦争を終わらすことはできない。だから戦争はしない」と…そういえば大学生の娘が中学生の頃、「戦争って究極の人権侵害だよね」と、話しかけてきたこともあった。

 23日は「慰霊の日」。戦争について、もう一度家族で話し合うのもいいですね。

 さて、私は8年前、人権擁護委員として法務大臣より委嘱され、現在も活動させてもらっている。「人権」とは「私たちみんなが生きていくために必要な権利」のことです。娘の言葉にあるように、戦争や紛争など国のエゴなどで、生活や命まで奪われることは究極の人権侵害です。

 それでは、私たちが住んでいる日本はどうでしょうか。虐待・イジメなど毎日のようにテレビや新聞などで報道されています。先日は、子どもに食事など与えないで部屋に鍵をかけ放置し、餓死させるという痛ましい事件もありました。とても心が痛くなる事件です。私たち人権擁護委員は、人権思想の普及のための啓発活動や相談活動、人権が侵害されているのか調査・救済活動を微力ながら行っています。

 私は人権擁護委員として、この活動に関わってきて重要だと思ったのは、「言葉の力」です。私たちは、言葉を使って話したり書いたりして、意思を伝えます。言葉にはプラスの言葉・マイナスの言葉があります。プラスの言葉は、自分自身も相手も笑顔になったり前向きになったりと心地よい言葉です。反対にマイナスの言葉は、嫌になったり落ち込んだりと苦痛を感じます。そして、いつしか心身を苦しめ、自殺にまで追い込まれることもあるのです。しかし、中には追い込まれた人を助けることができる言葉もあるのです。「大丈夫?」「どうしたの?」と気遣う言葉。「助けて!!」と訴える言葉。そして「ごめんなさい」「悪かった」と自分の過ちを認め、謝罪する言葉。このような言葉は、小・中学校で行う人権教室のなかで子どもたちに尋ねると、ほとんどの子どもたちが知っています。後は、いつ・どこで・誰に・どのような場面で使うのかです。私は小さい頃から繰り返し繰り返しさまざまな場面で使い方を教え、大人が見本を見せていくことが大事ではないかと思っています。

 もう一つは「手」です。人間には「手」があります。「手」は生活をする中で必要なものを作り出したり、取ったり使いこなしたりします。しかし、素手でまたは物を持って殴ったり、その手できたない言葉を書いたりもします。反対に、その手は手当てをしたり、褒め称えるために拍手をしたり、励ますために背中などを撫でてあげたりもします。不安な時は、手を握ってあげたり抱きしめてあげたりするのも、その手です。

 人間特有の言葉と手は、その人の心がけや考え方次第で、善にも悪にもなるのです。

 私は、子どもを対象にした人権教室や人権講話を通して前記のことを伝え、どうしたらよいのか考える機会をつくっていきたいと思っています。ぜひ家庭で、親子で、今使っている言葉を省みてください。自分の「手」はどっち手なのか見つめてみてください。何かを感じたり思ったりしたら、家族や友達で話すのも良いですね。プラスの言葉と相手のためになる手を持ちましょう。
 (なかざと ひろみ・人権擁護委員)

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