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旧暦:3月18日 友引 庚 
行雲流水
2014年10月7日(火)8:55

「サシバ14」

 「サシバは来たか」とヤマトゥにいる友人から電話がかかってきたりする。昨年は与儀一夫さんが伊良部で撮影した数百羽が群舞する写真をコピーして友人たちに送った

▼今年もあす、8日から寒露の節気に入る。サシバは季節の使者、晩秋の小雨降る爽やかな季節とともにやってくる。子どもの頃の思い出を連れてくる。親がいた、兄弟もいた。あの友はあの時、あの空を見上げていた。こまが回り、バッチ(めんこ)が裏返った

▼「旅することが生きることだ」とはいえ、風雨に耐えて幾海山を越えてくるけなげな姿に人は感情移入を行う。人も皆、せちがらい人の世を渡る旅人だから

▼芭蕉は片雲の風に誘われて漂泊の思いやまず旅に出たのだが、サシバを渡りの衝動にかきたてるのは何だろうか。おそらくそれは、DNAに刻まれた太古から蓄積された生きる戦略の記憶だろう。結局は、人もサシバも、生きとし生けるものすべては、大自然の律動に共振(共鳴)する仲間である

▼サシバが空に舞う。精悍(せいかん)な風貌と飛翔の美しさが人を魅了する。目標に向かって一直線に滑空する姿は生きる構えの直情。緩やかな曲線は舞。舞は生きてあることの賛美。明暗を反転させながら、らせん状に巻き上がっていく鷹柱、それは祈り、または、濁世の昇華である

▼島で羽を休めると、羽づくろいをして、星空に明日を夢見る。夜が明ける直前、彼らは呼びかけあって群れをつくり、南へ向かって一直線に去っていく。「ごきげんよう」、来年もまたやって来い。

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