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行雲流水
2015年9月17日(木)9:01

【行雲流水】「福祉と年金」

 過去の文化は、その文化圏の辺縁に位置していた地域に色濃く残っているといわれる。フィリピンにおけるカトリック教の戒律、朝鮮半島における儒教に基づく長幼の序などだ


▼台湾の李登輝さんの言説にも、日本人よりも日本人的な〝ものの見方〟があるように思える。「日本人的」とは明治期の独立自尊の精神のことだが、テレビでみた高砂族の老人にも似たようなものを感じた

▼かつて志願兵として太平洋戦争に参加した老人。南方戦線での過酷な体験を語るなかで、話題が台湾人には援護法の適用がないことに及ぶと意外な返事が返ってきた。「今さら、日本政府に請求する気はない。なぜなら、自分は日本人として戦ったのだから」

▼マイバラ ヌ シュウ(前隣の老爺)を思い出す。貧乏だが、寡黙で気品のある一人暮らしの老人だった。生活の窮迫をみかねた役場職員が「生活保護を受けるよう」に勧めたが、謝絶。「自分は昔、町会議員だった。みんなの憐れみを乞うのは自尊心がゆるさない」

▼昔気質の人たちの矜持(きょうじ)は、現代人には通じないであろう。今は、みんなで助け合うことはあたりまえ。暮らしやすい世の中になった。福祉を受けている人に「福祉を受けている」と思わせないことが最良の福祉だ、とも言える

▼ところで、世代間の順送りで後輩たちが先輩たちを支える年金システムは、少子高齢化で財源難だ。年金給付額は減額へ向かうことが予想される。早晩、制度改革が俎上(そじょう)に上がるだろうが、同時に受給者の心の持ち方も問われそうな気がする。

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