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2015年11月24日(火) 9:01

【行雲流水】「里の秋」

 「カラオケ」では、歌い手の個性や好みによって、多彩な歌が歌われる。また、みんなで声を合わせて歌うこともある。そのようなとき、好んで歌われる歌の一つに童謡『里の秋』がある


▼「静かな静かな里の秋」で始まるこの歌は昭和20年、終戦の年の暮れ、NHKが復員兵や引揚者たちを励ます特別番組を企画し、その中で流す歌を作曲家海沼實に依頼してできたものである


▼海沼は、斎藤信夫が昭和16年に作詞した『星月夜』に目をつける。小学校の教員斎藤が生徒の慰問文をヒントに作詞した作品である。しかし、父の武運を祈ることや、「大きくなったら兵隊さんだよ、うれしいな」などの言葉に戦時体制そのものの内容があった


▼海沼は、戦時中生徒にうそを教えていたことを反省して職を辞していた斎藤と話しあい、新たに『里の秋』が出来上がった


▼一、静かな静かな里の秋/お背戸に木の実の落ちる夜は/ああ母さんとただ二人/栗の実煮てます、いろりばた。二、明るい明るい星の空/鳴き鳴き夜鴨(よがも)の渡る夜は/ああ父さんのあの笑顔/栗の実食べては思い出す。三、さよなら、さよなら、椰子の島/お舟に揺られて帰られる/ああ父さんよ御無事でと/今夜も母さんと祈ります。この歌がラジオから流れると、父や夫、恋人を待つ人々の心をとらえ、大反響を呼び、NHKは「復員だより」という番組で流し続けた


▼椰子の島々、南方戦線では「玉砕」など悲惨な戦争が行われたことを考えると、平和の尊さ、戦争の不条理が改めて思われる。