04/27
2024
Sat
旧暦:3月18日 友引 庚 
行雲流水
2015年12月1日(火)9:01

【行雲流水】「平良南中学校」

 平良南中学校という学校があった。1948(昭和23)年、6・3・3制の学校制度に基づいて初めて創立された中学校で、4年間存立した。その後1952年に平良北中学校と合わさって平良中学校が創立された。存立した期間が短く、合併に伴うどさくさもあって、当時を語る資料は少ない

▼そうした中で、平良南中学校最後の文芸誌『みなみ』と『作文集』を佐久川良一氏が所蔵している。当時の学校や生徒たちの様子を知るうえで貴重な資料である

▼当時は琉球政府が設立される前で、宮古群島政府時代であったが、「宮古教育基本法」が制定されていた。この基本法は、日本国憲法の精神に則って制定された「教育基本法」とその精神を同じくするものであった

▼新しい時代に立ち向かう教師集団の影響か、作品にみられる生徒たちの姿には、夢や希望、進取の精神がみなぎっている

▼「井の中の蛙になってはいけない。世界の人と文通をしよう」と呼びかけた生徒は、公認会計士になった。「平和と人類福祉のために貢献したい」と書いた生徒は大学教授になった。「いつまでもわれわれの先生や級友とともに過ごしていたい。しかし、自分の希望を目指して飛び立ち、世のために尽くす人間にならねばならない」と書いた生徒は医学博士である

▼食糧も不足、何もない時代であった。情報も乏しかった。むしろそれ故か。教師への深い敬愛の念はどの文章でも共通している。何よりも学校は友情を育み、学ぶ喜びを保証し、知性を啓発し、視野を世界に広げていく所であった。

カテゴリー一覧

ID登録でパソコン、タブレット、スマートフォンでお手軽に!