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行雲流水
2016年5月19日(木)9:01

【行雲流水】(原油価格)

 原油価格の下落がさまざまな問題を引き起こしている。ガソリンや電気料金の値下げは大歓迎だが、いいことばかりではないようだ。「塞翁(さいおう)が馬」の故事もある

▼原油価格は、ときには1バーレル当たり140ドルまで跳ね上がっていた。サウジ、ロシアなどの産油大国の財政は潤い、国づくりにまい進することができた。だが、今年の年初には30ドルに下落

▼産油国は財政赤字の穴埋めに、国際金融・株式市場から資金を引き揚げている。その影響は日本の為替・株価相場にも波及。円高による輸出差損、株価下落による年金基金目減りなどをもたらし、ひいては経済成長や財政運営の足かせにもなりかねない状況だ

▼石油代替エネルギー開発の動きも止まる。石油代替エネルギーは、原油価格が高いからこそペイする。近年開発が進んだ米国のシェールオイルも、生産中止に追い込まれそうだ

▼そのため、原油価格低迷はエネルギーの中東依存度を高めるためのサウジの謀略ではないかとの憶測まで飛び出す。サウジとイランの対決は、表面上は宗派対立だが裏には原油価格相場の覇権争いがあるとの見方さえ生む

▼経済を律する〝見えざる手〟は、一筋縄ではない。「風が吹けば桶屋がもうかる」はなしもある。原油価格の下落は、回りまわって国民生活水準を押し下げかねない。グローバル経済は、やっかいな生き物ではある。各国の中央銀行内部では国益派と国際協調派の葛藤があるはずだ。世界同時不況の影を払拭できるかどうか。伊勢志摩サミットにも注目したい。

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