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2016年7月23日(土) 9:01

【行雲流水】(寓話)

 自然現象や動植物あるいは身近な道具を人のように話し働きもするさまざまな態様の人々にみたてて人間の愚かさ、失敗を分かりやすくした物語を寓話という。紀元前6世紀に遡るといわれるイソップ寓話の「北風と太陽」「アリとキリギリス」「金の斧」などはいまでも子供たちに読み継がれているのではないか


▼日本では平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて複数の作者の手になるといわれる「鳥獣戯画」が日本最古の漫画ともいわれそこに登場するのはカエル、サル、ウサギといった生き物たちの喧嘩、相撲、法事といった庶民の日常である


▼イソップ寓話と鳥獣戯画に登場する生き物たちには大きな違いがある。地中海に面した小アジアと太平洋に面し温暖な気候の日本との風土の違いに他ならない。日本は稲作を主とする緑豊かな国である。サルやウサギと並んで水辺に棲むカエルが登場しても違和感のない身近な生き物なのである


▼そのカエルを主人公にした物語がいま全国で話題になっている。百田尚樹の「カエルの楽園」だ。その本は、安住の地を求めて旅に出たアマガエルが心優しいツチガエルたちが「奇妙な戒律」を守り穏やかに暮らす平和で豊かな国にたどり着くが、そこもアマガルにとって安住の地ではなかった。問題は「奇妙な戒律」にあったのである


▼「カエルの楽園」はあくまでも寓話だ。寓話だから面白い。それをどう読むかは読者にかかっている


▼著者は本の最後をきれいなツチガエルが虐げられた後に息を引き取る際の言葉で締めている。「大丈夫だよ。ひどいことにはならないわ。だって、ナパージュには三戒があるんですもの」