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行雲流水
2016年10月1日(土)9:01

【行雲流水】(文化財)

 大学カリキュラムの研修を沖縄で終えた孫が訪ねてきた。住まいのある横浜にはこちらから幾度か行って成長過程を見てきたが宮古に来た彼は大人であった

▼目的は地下ダムを見ることにあったようだ。翌日、地下ダム資料館に行った。ひとけのない資料館で彼は何をするやら一時間余も車の中で待たされる羽目になったこちらのことはどうであれ「良かった」の一言だ

▼宮古島の地形・地質のおおよそを資料館の展示・説明で理解できたのだろう。しかし彼の見たものは人の手になる資料だ。地下ダムがこの島にできた訳やそれがもたらす恩恵は理解できても島の自然とそこに住む人たちがどのような暮らしをしてきたか、そういうところまで理解できたとは思えない

▼そこで実体験の現場を見ることになってムイカガーに行った。生活用水を得ることさえ並たいていの労苦ではなかった島のありのままを知ることで地下ダムの意義をより具体的に理解できると思ったからである

▼そこで、ひとりで水辺まで行くことを促した。昭和の29年ごろまでこの水くみ場は周辺地域の人たちの暮らしを支えた井戸であったこと小学生も百段余の石段を上り下りして水をくんだことを体験することで隆起石灰岩の島の自然がいかに過酷であるかを知ってもらうためでもあった

▼ムイカガーを彼がどう受け止めたかは聞くことはなかった。そのことより生活のための水を確保するのに苦労した人々に思いを馳せるムイカガーが荒れ果てていることに心が揺れた。雑草は生い茂り石段の両脇から伸び放題だ。この分だと足の踏み場は泥に覆われているかもしれない「文化財を大切にしましょう」の看板が空しい。

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