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私見公論
2017年7月28日(金)9:01

【私見公論】「新たな宮古島観光の展開と平良港の役割」/林 輝幸

 前稿では、急増するアジアのクルーズ需要と平良港での受け入れ体制の課題に対し、官民が連携して取り組んできたことについてお話しましたが、さらなる課題として、近年、就航するクルーズ船が急速に大型化するなか、平良港では5万トン級を超えるクルーズ船を接岸する岸壁がないために沖泊をせざるを得ない状況となっています。

 沖泊した場合は、本船からテンダーボートで漲水地区の旅客ターミナルまで乗船客を輸送することになりますが、この輸送には往復で約5時間を要するため島内での滞留時間が短くなってしまいます。これは乗船客の島内観光などに時間的制約を与え、満足度を低下させるばかりでなく、地域に与える経済効果も薄れることになります。

 ちなみに、平成29年の平良港の寄港の見込みは140隻でうち60隻以上が沖泊となり、昨年の沖泊回数23隻を2倍強も上回るなど、クルーズ船の大型化が早いスピードで進行しています。今後、寄港を定着させ、増やすためにも大型岸壁等の受け入れ環境の整備が急務となっています。

 一方、国では国際クルーズの振興による地方創生を推進するため、民間活力を活用した国際クルーズ拠点の早期形成を目的とした「官民連携による国際クルーズ拠点形成計画書」の募集を昨年10月から開始しました。宮古島市は世界第一のクルーズ船社であるカーニバル社と共同で応募し、全国で6港が選定されたうちの一港に選ばれました。これにより14万トン級の国際クルーズ船バースの早期整備が可能となり、宮古島市は、平良港の北防波堤の外側に14万トン級のクルーズ船が接岸できる専用岸壁を港湾計画に位置づけたところです。岸壁は国で整備を行い、民間であるカーニバル社は旅客ターミナルの整備および運営を手がけ、東京オリンピック・パラリンピック年である平成32年4月の供用開始に向け事業を推進することになります。なお、形成計画では平成32年の利用隻数をカーニバル社が190隻、他船社の利用も含め250隻を想定し、最終的には300隻以上の利用を見込んでおり、旅客数は60万人超に達するものと思われます。

 その他の新たな動きとして、下地島空港の利活用の計画が進んでいます。横浜のみなとみらい地区等多くの再開発を行ってきた三菱地所(株)が下地島空港で国際線等の旅客ターミナルを整備し、平成30年10月には開業の予定となっています。事業計画では平成37年には約57万人の利用客を見込んでいます。また、同社では平良港トゥリバー地区の用地を取得し、平成32年代初頭にリゾートホテルの開業を計画しています。これに伴って海路、空路を合わせた来島者の大幅な増加が予想され、近い将来、入域観光客200万人時代が到来することを意味します。

 このように宮古島や平良港を取り巻く環境が激変する時だからこそ、長期的な視点に立った宮古島観光の有るべき姿を再検証し、平良港については、国際クルーズ拠点形成を中核とした新たな観光振興と連携した取り組みを示す必要があります。そして特定の者だけが利益を受けるのでなく、宮古島全体が広く恩恵を享受できるものでなければなりませんし、そうした仕組みづくりも必要だと思います。

 今年9月30日に予定しています国際クルーズ拠点整備事業の起工式に併せて、平良港における国際クルーズの拠点形成と周辺リゾート開発がもたらす宮古島観光へのインパクトや地元で取り組むべき課題などをテーマとした国際クルーズシンポジウムを開催します。新たな宮古島観光の将来展開と平良港の役割について考える良い機会かと思います。

 次回はシンポジウム開催に先立ち、宮古島の観光振興において平良港の果たすべき役割と課題等について紹介します。(沖縄総合事務局平良港湾事務所所長)

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