2018年10月26日(金) 8:54

【私見公論】親泊宗秀/「違和感なく使える」その裏には

 施設のトイレを利用する機会は意外に多い。特に旅先では言うに及ばずお世話になる。


 なにげなく、利用するトイレだが、商業施設などでは、集客の戦略として、トイレに多額の予算をかけているところが多い。気配りを重んじる業種のトイレはにおいすら芳しい。


 どの業種にも自分の仕事に自信と誇りを持って勤めている人が居る。手前みそだが、私の職場にも高い意識を持って自らの役割を果たしているスタッフたちが居る。当施設は開館から20年余を超えているが、楽屋、客席のトイレが違和感なく使える。


 それには、理由がある。「ここは、市民が利用する施設だから、トイレはきれいに保とうね」「トイレがきれいだと、気持ちがいいさ」などと、清掃業務の大変さをよそに当初から担当する委託スタッフとひそかに話し合っていた。


 清掃担当は丁寧な仕事をする人だったものだから、便器の隅々まで磨き上げて臭いを放たない。特に男子用の便器の排出口には、目皿という部品があり、放置すると尿石がこびりつき臭いを放つ。清掃のポイントは見えないところにあるらしい。


 催し物がある翌日には、応援が入るが、それ以外の日は一人でこなさなければならない大仕事だ。施設には、トイレの他にも、客席、ロビー、廊下、楽屋、楽屋廊下など、守備範囲は広い、加えて屋外にまで気を配る。いくら仕事とはいえ、細部にまで気を抜かない役割を果たすのは至難の業だ。そのスタッフは残念なことに、数年前、病に倒れた。最近聞いた話だが、療養中にもかかわらず、施設の仕事を危惧して、後任に電話をしてきたそうである。後任は言う。前任者の意思を損なわず、手本にして自分の仕事をしているのだと。


 人々が集う場所だから、その目的を壊さないためにも、裏方の仕事は違和感をもたれないよう心がける必要がある。それには、自分なりの流儀があるように思う。


 劇場舞台スタッフたちにも、流儀があるように感じる。彼らは、音響、照明、舞台技術の専門知識を持ち裏方に徹している。舞台付属設備を維持していくためには、日頃の保守点検が重要になる。なぜなら、本番当日に、いずれかの機器が作動しなければ意味をなさないからだ。


 出演する方の檜(ひのき)舞台をいかにして輝かせるか。それが仕事なのだが、妥協を許さない。舞台道具に、ささくれが一つあるだけで、ケガの原因になる。舞台機構に至っては、緞帳(どんちょう)が故障してしまったら、催し物にさまざまな影響が出る。音響設備は、音が出せなくなったらアウトだ。それに微妙な調整を必要とする神経を使う仕事だ。照明機器は、幾通りものパターンに対応できるように数種類の機器がある。その管理だけでも、物理的作業をこなさなければならない。いつでも使えるために、こうした保守点検業務を寡黙に行っている。


 催し物があるとき、音響、照明機器の操作が必要になる。それには専門のオペレーターが必要だ。オペレーターは専門性の高い知識と、技術が、その真価を問われる仕事だから、コンサート、演劇など舞台芸術の世界では、舞台監督、専属のオペレーター、舞台スタッフが各々の役割を担い全国の公演に同行する。


 各都道府県、市町村にある舞台を有する施設は多岐にわたり、仕様も違う。当館の舞台スタッフは、公演で乗り込んでくる裏方さんたちがスムーズに仕事ができるよう、舞台に使用する機器や道具類を効率よく整理整頓している。自分たちが使う以外に、他者が使用する前提で仕事をしているのだ。掃除業務と同じように、仕事の流儀を持って自分たちの役割を全うしている。「違和感なく使える」その裏には、従事する者のたゆまない努力が隠されていることを知っておきたい。


 そんなこともあって旅先でホテルを利用するとき、客室清掃担当者が最初に目にするであろう、備え付けのメモ用紙にメッセージを残すようにしている。


 伝わるかどうかは分からないが、一宿の恩義を込めて…。(市職員)

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