2019年5月21日(火) 8:54

【行雲流水】(詩歌の世界)

 万葉集の中の有名な一首、「東の野に炎(かぎろひ)の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ」。炎は輝く光。歌意は、「東の野の果てに曙光がさし始めて、振り返ると、西の空には低く下弦の月が見えている」という、壮大な景観が詠まれている。その原文は「東野炎立所見而反見為者月西渡」と万葉仮名で書かれている


▼琉球の「おもろそうし」の日の出賛歌も美しい。「天に鳴響(とよ)む大主/明けもどろの花の/咲(さい)渡り/あれよ 見れよ/清らやよ/又、地天鳴響む大主」


▼次に、贈答歌の一つ、「あかねさす紫野行き標野(しめの)行き野守は見ずや君が袖振る」(額田王)。対して、「むらさきのにほへる妹を憎くあらば人づまゆゑに吾恋ひめやも」(天武天皇)と答えている。「あなたの私への恋の表示を人が見ていますよ」。それに答えて、「あなたが人妻でも、恋せずにはいられません」と答えている


▼ここで2人は現実に愛しあっている恋人同士ではなく、宴席の余興で恋人同士を演じて詠まれた(佐佐木幸綱著『万葉集』)。その昔、宮古でも、恋愛の場や祝宴で、トーガニアヤグの旋律に乗せて、即興で、贈答歌がやりとりされた


▼絶世の美女額田王(ぬかだのおおきみ)は「むらさきのにほへる」と形容されているが、宮古の内根間の美女かながまは、「マーニの若芽のように白く、闇夜の星のように輝き、奇麗な三日月を拝みたくなるような生まれ」と、うたわれている


▼『万葉集』に限らず、もともと、詩歌の世界はすべての人に開かれている。(空)

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