久貝 多千男さん(58歳)/義肢装具師
体験通し医療装具開発
昨年は、1月に10年前出願した「膝関節の歩行補助具」で特許取得、6月には6年前に出願した「膝関節リハビリ用歩行補助具」でダブル取得となった。装具は、装着したままハンドルで調整ができ、筋力低下の予防、トレーニングに適しているという。「軽くて人体に害のないプラスチックにこだわってきた。ようやくそれが認められてうれしい」と長年の努力をかみしめる。
膝関節の痛みをかかえ、何とか自分に合った装具が作れないか考えていたとき、「装具の勉強をしたら」という友人の一言がきっかけとなった。28歳で東京職業訓練校に入学。6年間過ごした東京では技術を身に付け、車いすバスケットなどを楽しみ仲間も増えた。30半ばで古里に戻り、福祉の仕事に。介護商品の店を営み、当時庶民には高額なシルバーパンパースを議員に訴え市に補助金を出してもらったりした。
ところが人生順風満帆とはいかない。40代に心筋梗塞で倒れる。リハビリを続け、なんとか元の体に戻ったのは50に手が届こうとしていた。それから、装具作りに力を入れる。「材料費も無いので、最初水道パイプを切ってバーナーで伸ばし、それを使っていた」と苦笑。アイデアは次々と沸き、歩行用膝バンドや、腹式バンドなど、テレビショッピングで紹介されたこともある。
今年は特許を取得した商品の生産業者も決まり、夢が膨らむ。「去年は一つ目標を達成した。これからも、もっともっと違和感のない装具を考え、膝関節炎で悩む人たちに朗報を与えたい」
久貝多千男(くがい・たちお)1953年6月7日平良生まれ。小4から6年まで沖縄本島の整肢療護園へ。平良中を卒業後、就職で愛知県へ。古里に戻り、車の免許を取得、営業などの仕事に携わる。28歳で東京職業訓練校に(2年)。古里に戻り30半ばで介護用品の「シルバーライフ」立ち上げる。50代から新たな装具作りに意欲を燃やす。