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インサイドリポート
2013年4月3日(水)23:58

背景に厳しい財政事情/改良区 農業用水使用料金増額検討

農家の理解得られるか

 「今後の運営に関しては賦課金を上げるしかないだろう」-。先月27日に開かれた宮古土地改良区の総代会で仲間克理事長が口火を切った。「来年度あたりから検討しなければならない。今の厳しい財政状況を理解してほしい」。総代に重い課題が突き付けられた。


 ■賦課金の実態

 賦課金とは、農家(組合員)が納める農業用水の使用料金のこと。徴収された賦課金は組合費として収入に計上され、地下ダム関連施設の修繕費などに充てられる。
 宮古土地改良区の組合員(2012年3月31日現在で1万188人)が納める賦課金は10㌃当たり年間1500円で、県内の国営地区ダム事業の中では最も低い。
 他地区と比較するとその差は歴然だ。石垣土地改良区の宮良川、名蔵川の両地区の農家は10㌃当たり4000~6000円を負担。沖縄本島南部は水の使用量によって変動するが、宮古土地改良区を基準に試算すると平均1万500円と抜きん出て高い。伊是名の賦課金単価も高く、試算では5050円に及ぶ。いずれにしても4000円を下回る賦課金はない。
 このような実態の中でも宮古土地改良区では農家の負担軽減を重要視して1500円に据え置いてきた。その賦課金をなぜ増額する必要があるのか。背景には、厳しい財政事情がある。

 ■先細りする収入

 財政難の要因は収入の大幅な減少だ。土地改良区は地下ダム関連施設を管理して農業用水を供給しているが、国や県の補助金が年々減少し、必要経費(収入)の捻出に苦慮している。2001年のピーク時の補助金は5500万円。今は3200万円に落ち込んだ。
 基幹水利施設の管理や操作業務に関する受託費も右肩下がりで減額しており、ピーク時の6400万円から5300万円に目減りしている。
 収入が先細りする一方で支出はかさむ。かんがい施設の整備率に伴って水を利用する農家と面積は増え続け、関連施設の管理作業や必要経費は増加の一途だ。
 その上に地下ダムの水をくみ上げるポンプ機器の故障や宮古本島全域に張り巡らされたパイプラインの破損は後を絶たない。昨年の修繕費は1600万円に及んだ。
 今後、関連施設の老朽化は一層進むため、修繕費は確実に増えて財政を圧迫する。関連施設の故障や不具合に関する問い合わせは年間1000件以上に達している。

 ■「地下ダムは財産」


地下ダム整備は宮古の農業を劇的に変えた

地下ダム整備は宮古の農業を劇的に変えた

 宮古土地改良区の財政運営は農業用水の利活用と直結する。必要経費を確保できなければ地下ダム関連施設の管理・運営に支障を来し、最悪の場合は農業用水の供給にも影響が出る。
 土地改良区は理事会内に組織予算委員会を立ち上げて支出の徹底削減を図った。理事定数の削減や水管理人を廃止。人件費にもメスを入れて給料と手当てを合わせて年間300万円カットした。
 それでも財政の好転にはほど遠い。仲間理事長が「まずは職員と役員が身を削ろうと決めた」と強調した上で、総代に賦課金増額への理解を求めるのはそのためだ。
 総代会で、賦課金増額に対する大きな反論はなかった。平良地区の総代は「総代が模範となって地下ダムの農業用水を無駄なく、効率的に使うことが大切だ。地下ダムは財産。われわれが責任を持って次の世代に引き継がなければならない」と声を強め、農業用水を利用する農家一人一人の意識改革を訴えた。
 地下ダムは、宮古島に水をもたらし、農業を激変させた。その施設の管理と運営に黄信号が灯る中、賦課金の増額という課題に向き合う農家の覚悟が問われている。

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